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少年法逆手にとる少年犯罪
— それでも保護? —
「おためごかしはやめよう。本当のことを言おう」と、このコラムで何度呼びかけたことか。だけどまた、川崎市の中学1年、上村遼太君(13)の事件で同じことを書かなければならない。
NHKをはじめ上村君のことを「上村さん」と表記しているメディアもあるが、どう見たって彼は子どもだ。「中学生なんだからもう大人」と理屈をつけているようだが、そういう姿勢がことの本質を見誤らせている。上村君を殺害したとして逮捕された不良グループは、上村君が子どもだからこそグループに引っ張り込んだのだ。
少年法では、14歳に満たない子どもには刑事罰は科せられない。最近の不良グループはそこに目をつけて、こうした子どもに万引きやひったくりをさせて自分たちの小遣いにし、子どもたちが抜け出そうとすると、激しいリンチを加えるのだ。
グループに大人がいる場合は犯罪を20歳未満の少年に押しつけ、その少年は、今度は上村君のような子どもに事件を犯させる。未成年者保護という少年法の精神を完全に逆手にとっているのだ。それでもなお、20歳未満は少年法で保護せよというのか。
もう1点、上村君は、ふるさと隠岐では人気者のかわいい子どもだったという。だが、そのことばかりが強調されて、大事なことがここでも見逃されていないだろうか。上村君の殺害時刻は午前2時ごろ。だけど、この時間に子どもが家にいなくても、家族から捜索願いや警察への連絡はなかった。逮捕された3人は、主犯格の少年を含め、全員が未成年者だった。もちろん、その家族からの届けはない。
厳しいことを言うようだけど、明らかに家庭崩壊していたのではないか。この少年少女たちには、かばってくれる家族も、よりどころとなる家庭も、もはや存在していなかったのだ。格差社会のなかで、残念ながら、その一部で完全に家族が崩壊してしまっている。壊れてしまった家庭家族から、子どもたちは犯罪者が口を開けて待っている社会に放り出される。
国会で野党の質問にブチ切れて野次を飛ばし、メディアから「お子ちゃま」と揶揄されている安倍さんには、こんな子どもたちの姿は目に入らないんだろうな。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年3月3日掲載)
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