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経営法談
指揮命令系統の迅速な構築が第一
大谷 昭宏
「事件、事故は最初は大きく見ろ。オオカミ少年と言われることを恐れるな」。
「一刻も早く、だれにでもわかる指揮命令系統を構築せよ」。
東日本大震災による福島第一原発の事故を報道しながら、新聞記者になった一年坊主のときから、私たちが身に刻み込むようにして叩き込まれたことが、どうして政治家にも、企業にも、役人にも教育されていなかったのだろうか、と歯痒さを通り越して、悪夢を見ているようだった。
事件や事故、災害が発生すると、記者は警察や消防と競うようにして現場にかけつける。
「なあに、大したことないさ」と、一人二人の記者で出かけて行って現場に着いて「さあ大変」。とんでもなく大きな事件、事故、災害だったときは取り返しがつかない。
他社は最初から10人15人という記者やカメラマンを投入している。初動の取材は完全に負ける。あわてて応援を頼んだところで遅れは取り戻せない。こんな取材は、たいてい最後まで他社にやられっ放しになる。
記者に限った話ではない
すべての組織の 危機管理体制にも通じる |
簡単な話なのだ。初動で大量の記者を投入して、大したことでなかったら、どんどん記者を帰せばいいだけのことなのだ。最初は「オオカミ少年」でいいのだ。
といっても、数が多ければいいというものでもない。指揮命令系統をいち早く構築して指揮官を決めなければならない。そうでないと、気がつくと一人の目撃者を囲んでわが社の記者が三人も顔を並べていることがある。同じビルの屋上から、わが社のカメラマンが四人も現場にカメラを向けていることだってある。こんなものは取材ではない。野次馬と変わらないのだ。
これは取材だけではない、企業や組織の危機管理にも相通じるのではないだろうか。
自慢げに書いているのではない。このたびの政府と東電の対応を見ていると、失敗ばかりやらかした過去がよみがえってきて、悪夢にうなされている気分になってしまうのだ。
(会社法務A2Z 2011年6月号より)
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