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評論・随筆「鉄笛」
私の「三都物語」

大谷 昭宏

愛犬とくつろぐ

 「ご自宅には、年に何日いらっしゃるんですか」「たまに家に帰って、ワンちゃんに吠えられないですか」。こんなことを問われるようになってもう十数年になる。東京で生まれて育った私は、新聞社を退社してフリージャーナリストになったあとも自宅や事務所を記者時代の大半をすごした大阪に置いている。


 だが、いま出演しているテレビ番組は大半が東京のキー局。ほかに木曜日は地元大阪、土曜日は名古屋の、いずれも準キー局の番組をお引き受けしている。だから大阪−東京、東京−大阪、大阪−名古屋と目まぐるしく動き回り、加えて全国各地の講演もある。当然、大阪の自宅以外はホテル泊まりである。交通費や宿泊代のことを考えると、いっそのこと、ふるさと東京に戻った方がいいのでは、と助言してくれるテレビ局の方も少なくない。

 だけど、当の私に、そんな気はさらさらない。ちょっとカッコつけて言うなら、わが内なる異文化交流なのだ。


 橋下徹大阪府知事の「大阪都構想」も、河村たかし名古屋市長の市民税減税、市議定数削減も、詳細とまでは言わないが、もっとも深く理解しているフリージャーナリストは私だと自負している。政治や経済、そんな大層な話題はさておいて、名古屋の番組の後半は中日ドラゴンズコーナー。子どものころからの巨人ファンで、応援歌といえば巨人の「闘魂こめて」の私が、いまでは「燃えよ ドラゴンズ」は空で歌える。浪速の町のそこここに流れているタイガースの「六甲おろし」は大阪暮らしで自然と覚えてしまった。


 わが家の味つけはいつの間にか京風のうす味。なのに、年に何度かお江戸の「どぜう」が食いたくなる。丸のどじょう鍋をつつきながら、「てやんでぇ、トンボだって目ン玉が複眼だから、いろんな角度から物が見えるってんだ。ホンマ、そうとちゃいまっか」なんて出所不明、意味不明の日本語で、私家版「三都物語」を楽しんでいる。

(大法輪 2010年8月号より)



大法輪閣
 http://www.daihorin-kaku.com/
三都物語Japan(JR西日本)
 http://www.santo-monogatari.com/
TOKYO decade(LatLongLab)
 http://latlonglab.yahoo.co.jp/service/decade.html


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