黒田清JCJ新人賞を贈る
選考委員・大谷昭宏
未熟児で生まれ、なお、その後も障害を抱える子どもたちは、社会的に最も弱い立場と言える。だが、NICUに入れるにも、そこを出たら生きて行けない子どもたちで常に満杯状態。在宅でこの子たちを養育するとなると、両親、とりわけ母親の負担は計り知れない。そこに焦点を当てたこの作品はこの世に生まれた命と私たちは、どう向き合うのか、鋭く、重く突きつけている。
そんな重いテーマを女性らしい、そして何より母親らしい眼差しで遊佐さんはやわらかく描いている。これは選考委員会のあとの出来事だが、日本全国で200人以上の100歳を超えるお年寄りが行方不明になっていることが明らかになった。人生のスタートラインについた子どもの中でも、最も弱い立場にいる超未熟児。そして、いよいよ人生の終焉を迎えようとしている超高齢者。その二者に、これほどまでに冷たい仕打ちをする私たちの社会とは一体、どんな社会なのか。それを思うとき、遊佐さんに新人賞を贈ったことは一層、意義のあることになるのではないか。
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