黒田清JCJ新人賞 2009
黒田清JCJ新人賞
2009年トロフィー(伊達伸明氏作)
今年で52回目の2009年度のJCJ賞贈賞式が8月8日、千代田区の日本プレスセンタービルで行われた。今年は残念ながら、JCJ大賞が設けられた2000年以降はじめて、大賞は該当作品なしという結果となった。
8回目となる黒田清JCJ新人賞には、早川由美子さん制作のドキュメンタリー映画、
『ブライアンと仲間たち ─ パーラメントスクエアSW1』
が選ばれた。
映画『ブライアンと仲間たち パーラメント・スクエアSW1』公式サイト
http://www.brianandco.co.uk/
早川さんの作品は、ブライアン・ホウという男性とその支援者が、イギリスの国会議事堂前で約8年間、テント生活をしながらイラク戦争に抗議する姿を克明に描いたもの。早川さんの取材は約1年半に及び、ブライアンさんの活動や、ブライアンさんらを排除しようとする警察の姿などを体当たり取材で追い続けたことが評価され、今回の受賞となった。
早川さんは郵便局員やOL生活を経てジャーナリズムの世界に入った、一風変わった経歴の持ち主。OL時代、土日を利用してはホームレスを取材したり、その後、本格的にドキュメンタリー映像を勉強しようと、2年前、語学留学を兼ねてイギリスのジャーナリズム専門学校に入学。ブライアンさんの存在を知ったのはロンドン滞在中のことで、「最初はホームレスと勘違いした」。だが、次第に彼の生き方に興味を持ち、ブライアンさんをドキュメンタリー初作品のテーマにすることを決めたという。
贈賞式
授賞式のスピーチで早川さんは、「市民の声を封じる世の中は怖い。ジャーナリズム先進国と思われたイギリスでさえ、最近、テロ対策の名目で抗議活動やデモの取材を制限する法律が国会を通ってしまった。違反すれば、最高で懲役10年の刑。いずれ日本にも同じ日が来るかもしれない。言論の自由の大切さを訴えるために、今回の映画を撮る決意をした」と語っている。
黒田清JCJ新人賞は2002年に創設され、新人ジャーナリストの育成と支援を目的としている。受賞者には、賞状、記念の木製オブジェのほかに黒田家および大谷昭宏事務所からの賞金50万円が贈られる。
左から、黒田脩さん、早川由美子さん、大谷昭宏
なお、同新人賞は初回の受賞者こそ男性だが、残り7回はすべて女性。昨年受賞した城戸久枝さんの『あの戦争から遠く離れてー私につながる歴史をたどる旅』(情報出版センター)は、同賞以外にも大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞の計3賞を同時に受賞。NHKでドラマ化されたほど骨太の作品に仕上がっている。城戸さんや早川さんなど、ここ近年、女性の活躍が目立っている。
他の各受賞作は次の通り(敬称略)。
【JCJ賞】
受賞作:
『「戦地」派遣─変わる自衛隊』岩波新書
受賞者:
東京新聞防衛省担当記者 半田 滋
受賞作:
NHKスペシャル「こうして“核”は持ち込まれた─空母オリスカニの秘密」
受賞者:
NHK広島放送局
受賞作:
熊本日日新聞「川辺川ダムは問う」
受賞者:
熊本日日新聞「川辺川ダムは問う」取材班
日本ジャーナリスト会議
http://www.jcj.gr.jp/