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黒田清JCJ新人賞 2007


黒田清JCJ新人賞 2007年トロフィー
黒田清JCJ新人賞 2007年トロフィー(伊達伸明氏作)

コバウおじさんを知っていますか − 新聞マンガにみる韓国現代史
 8月11日、東京・内幸町の日本プレスセンターで、日本ジャーナリスト会議(JCJ)の「JCJ大賞」「JCJ賞」「黒田清JCJ新人賞」の贈賞式が行われた。

 今年で6回目となる黒田清JCJ新人賞は、『コバウおじさんを知っていますか − 新聞マンガにみる韓国現代史』(草の根出版刊)の著者、チョン・インキョン(鄭仁敬)さんに決まった。チョンさんは、韓国の大学を卒業後、日本で唯一といわれる京都精華大学芸術学部マンガ学専攻に留学した韓国人女性で、彼女自身もカ−トゥ−ンという一コマ風刺漫画の作者。ジャーナリストの新人賞としては、まさに異色といえるだろう。

 しかも、受賞作の『コバウ…』は、大学院の博士論文を本にしたもの。韓国の新聞紙上で45年間連載されて人気を博した4コマ風刺漫画「コバウおじさん」とその作者、キム・ソンファン(金星煥)にスポットを当て、軍事政権下にあった60年代、70年代の韓国の近代史を探ったのである。

 ちなみに、コバウおじさんは、三頭身で口はなく、大きな鼻、点のような目をした無表情な主人公。しかし、細かな感情を一本の髪の毛で表わしている。たとえば、驚いたときにはその毛がまっすぐに立ち、呆れたり困ったりするとぐちゃぐちゃになる。無表情な分、その効果はバツグンだ。あからさまに体制を批判できない時代、そんな風刺漫画特有の表現が、庶民の喝采を浴びたのである。

贈賞式
贈賞されるチョン・インキョンさん

 チョンさんはそんな母国の風刺漫画家に敬意を表し、論文のテーマに選ぶ。膨大な資料の収集力、分析力、キム氏に対する粘り強い取材力、権力に対する批評精神、そして、巻末に掲載されている彼女自身の作品に選考委員は絶賛、将来は“コバウおばさん”になってほしいとの声もあり、文句なしの受賞となったのである。

 壇上で賞状、造形作家・伊達伸明氏制作の木製オブジェ、そして賞金50万円を受け取るチョンさんは、温和な美人。後で聞くと、チョンさんの両親は、韓国で私学を経営しているお嬢さまだというが、賞状授与後、大谷は「権力に対し、一生抵抗していく精神を持ち続けるのではないか」と評した。続けて、黒田清さんの実兄で、大阪食糧卸の黒田脩会長は「生前、清君は韓国の人たちととても仲が良かった。今回のチョンさんの受賞は、清君もとても喜んでくれていると思う」と語った。

 贈賞後の受賞者スピーチに立ったチョンさんは、独裁政権下にあった中学時代、校長室に歴代大統領の肖像画が飾られていたり、映画館で上映前、必ず起立して国歌を斉唱したことなどを話し、時の権力者の“うぬぼれ”を厳しく批判し、風刺の必要性を訴えた。

 また、会場には、チョンさんの最新作品が展示された。いずれも安倍政権を強烈に批判したもので、ひときわ来場者の注目を集めていた。


会場にて
チョンさんのマンガ作品の前で(左から黒田脩氏・大谷・チョン・インキョンさん)



 なお、「黒田清新人賞」以外の各受賞作は次の通り(敬称略)。

【JCJ大賞】
受賞作:<新聞長期企画と写真集>『水俣病50年』(熊本日日新聞)
受賞者:熊本日日新聞「水俣病」取材班

【JCJ賞】
受賞作:<新聞長期企画>『挑まれる沖縄戦/「集団自決」問題キャンペーン』
(沖縄タイムス)

受賞者:沖縄タイムス「集団自決」問題取材班

受賞作:<書籍>『「改憲」の系譜/9条と日米同盟の現場』(新潮社)
受賞者:共同通信社憲法取材班

受賞作:<書籍>『生きさせろ!/難民化する若者たち』(太田出版)
受賞者:雨宮処凛

【JCJ特別賞】
受賞作:<ドキュメンタリー映画>『ひめゆり』(プロダクション・エイシア)
受賞者:監督 柴田昌平、共同製作 財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり同窓会



日本ジャーナリスト会議
http://www.jcj.gr.jp/

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