父の口から事件真相を…松本死刑囚三女の思い
− 地下鉄サリン事件今日23年 −
きょう3月20日は死者13人、負傷者6300人を出した地下鉄サリン事件から23年である。今年は過去にくらべて、このオウム真理教事件で死刑が確定した13人を取り巻く状況は大きく変わっている。
1月に一連の事件の裁判がすべて終結。さらに先週、東京拘置所で拘置中の13人の死刑囚のうち7人が大阪や名古屋、福岡など死刑執行施設のある5カ所の拘置所に移送され、いよいよ執行が近いことをうかがわせる。
そんな中、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」(月〜金・午後4時50分〜)が麻原彰晃、本名・松本智津夫死刑囚(63)の三女、アーチャリーこと松本麗華さん(34)をインタビュー。私も近づく刑執行への思いを語らせてもらった。
2月、この日も東京拘置所に父を訪ねる麗華さん。だが刑務官の「出てこない」のひと言で数分で戻ってきた。松本死刑囚は長期拘留による拘禁性精神疾患と診断されたが、東京高裁は刑事能力ありとして死刑判決。いまも病気を装う詐病だとする説がある一方で、半年から1年の治療で人間性を取り戻せると主張する精神医学者も数多くいる。
麗華さんも、「なぜあのような凄惨な事件を起こしてしまったのか、父の口から話してほしい」と訴える。私もまた、事件の本質は松本死刑囚が語らない限りわからないと思う一方で、事件から23年、だれひとりとして罪を償っていないことは法治国家として許されないという思いもある。
松本死刑囚に溺愛されたという麗華さんは最後に被害者への思いを聞かれ、長い沈黙のあと、「不条理な死を強いられた方に、いったい何が言えるのでしょうか」と声を絞り出した。
社会の悪、世の不条理との最終戦争を意味するハルマゲドンに向けて暴走したオウムの若者たち。失われた命に、命で償う日が近づいている。ただ、あの日から四半世紀、いま政権を覆う腐敗腐臭。その腐敗によって自ら命を絶つ不条理を強いられた財務省の下積み役人たち。その死に心痛めるどころか、歯牙にもかけない様子の宰相夫妻。部下に責任をなすりつけ、なお悪しざまにののしる財務大臣。
自らの不条理を覆いかぶせ、国民の目をそらさせる。得意なその手法のための死刑執行だとしたら、決して許されるものではない。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2018年3月20日掲載)
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