国の言うことだからこそ信用できない
− 避難解除地域に子どもが戻らない −
東日本大震災は、おととい3月11日、発生から7年となった。私も3月初め、長いおつき合いとなった福島県川俣町の山木屋地区をお訪ねした。だが、そこで胸をよぎったことは、国の復興は順調という言葉とは正反対、このままでは村が消えるという思いだった。
山木屋は飯舘村、浪江町に接する町の山間部。まだ村だったころから人々は寒冷地の稲作を成功させ、花作りや牧畜で豊かな地域を目指してきた。冬には天然のスケートリンクに子どもたちの声が響いていた。
だが、そんな地区も原発事故で避難指示。昨年やっと解除になって、この1年で825人の避難者のうち、278人が戻ってきた。帰還率33%は他の解除区域に比べて決して低くない。ただ、寂しいことに15歳未満の子どもの帰還はゼロ。そんな地区の小高い丘の上に、かつての山木屋小学校を改築した白と緑の壁が美しい山木屋小中一貫校が完成、4月に着任する校長先生に案内してもらった。
最新設備の英語教室にバドミントンコート3面の体育館。びっくりしたのは、開閉屋根つきの屋内プール。学校改築に6億5千万、プールに4億5千万、総額でじつに11億円。全額復興予算と文科予算。なんとか子どもに帰ってほしいという国の思いが伝わってくる。
なのに4月、地区外からバスで通う子どもは中学生10人、小学6年生5人のたった15人。避難解除区域の子ども帰還率8.6%に比べて高い方とはいえ、地区の小中学生99人の15.2%。しかも6年生以下がいないということは、豪華な学校も4年後には休校か廃校。やがて地区そのものが消えてしまうのではないか。
なぜ? どうして? 尽きない疑問に、モザイク入りでもインタビューに応じてくれる保護者はいない。やっと小中学生の孫を持つおじいちゃんが重い口を開いてくれた。
「国は放射線量が下がったから避難解除という。だけどいまの政府を信じて子どもになにかあったら申し訳が立たない。学校に通わす親、通わさない親、ともに揺れ動いているのです」
加計問題の文書破棄に、厚労省のデータごまかし。さらには森友学園の文書書き換え。─国の言うことだからこそ信用できない─。春がはるかに遠い、被災から7年の3月である。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2018年3月13日掲載)
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