「週3回のカジノ通い」は依存症ではないのか?
− 大阪・釜ケ崎地区を思い出した −
平昌五輪のメダルラッシュを伝える新聞の別の紙面を見て、唐突に記者時代、持ち場だった大阪・愛隣地区、通称釜ケ崎を思い出した。記事には、「カジノ日本人週3回上限 依存症へ対策」とある。
ときには落ちこぼれた人たちの吹きだまりともいわれる釜ケ崎。ドヤ(簡易宿泊所)の軒先で、立ち飲みの屋台で聞いた彼らの身の上話。競輪、競馬、ボートレース、パチンコ、それに違法な賽(さい)本引き、手本引き賭博。ギャンブルで、どれほど身を持ち崩したことか。あとで数千万円もの使い込みで指名手配中と知った男もいた。
だが彼らは競馬、競輪に通う金がなくなると、道に線を引いて、どこまでそこに近づけて小銭を放れるか、“投げ銭賭博”に日がなうつつをぬかす。まぎれもない依存症。
その釜ケ崎から10キロも離れていない大阪湾の埋め立て地、夢州(ゆめしま)に2025年万博とセットで大阪府がなんとしてでも引っ張って来たいカジノ。その新たな公営ギャンブルの依存症対策の政府原案が明らかになったというのだ。
それによると、日本人の入り浸りを防ぐために入場は連続する7日間に3回。また中期的な制限として、連続する28日間で10回までとするとしている。その本人確認には、莫大な税金を注ぎ込んでおよそ利用者のないマイナンバーカードにチップを埋め込み、「カジノ管理委員会」がチェックするという。このシステムにいったいどれほどの天下り役人がなだれ込むことか。
それはともかくとして週に3回、あるいはほぼ1カ月に10回のカジノ通い、これが依存症ではないというのか。心配ご無用、釜ケ崎の日雇い労働者は、まずカジノには来ないというなら、賭け金制限もないばくち場にサラリーマンが週に3日、あるいは月に10日も通って、まっとうな勤め人、家庭人生活が送れるというのか。
異次元金融緩和という、どこから見てもばくちのような政策をまたぞろ延長しても、一向に先の見えないアベノミクス。もはやそのものズバリのギャンブルに頼るしかないのだろうが、国にはやっていいことと、悪いことがあるはずだ。
♪ここまで落ちたというけれど 根性まる出し まる裸…(釜ケ崎人情より)は、演歌の世界だけにしてほしい。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2018年2月20日掲載)
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