普天間の814世帯転居を
− 有明アリーナより安い300億円弱 −
「校庭がこんなに狭いのに随分立派なフェンスですね」。「いえ、それは学校のものではなく、基地のフェンスです」。ニュースを伝えながら、10年ほど前、学校を案内してくれた女性教諭の寂しげな顏と、愚かな質問をしてその場にいたたまれなくなった、あのときの私を思い出してしまった。
沖縄・米軍普天間基地に隣接する普天間第二小学校の校庭にCH53型大型ヘリの窓枠が落下、児童1人が腕にけがをした。スタジオには約1メートル四方の窓枠の模型を持ち込んだが、重さは7.7キロ。上空から子どもが集まっていた所を直撃したら、即死者が出たはずだ。
基地に近いというより、べったりくっついている普天間第二小。いくら日本政府が「飛行ルートから外して」と要望しても完全に無視。CH53はもちろん、いまはそれに加えてオスプレイも日常的に飛んでいる。
このコラムで何年か前に紹介した、普天間第二小で学んだ子どもたちの詩を集めた「私たちの教室からは米軍基地が見えます」(渡辺豪著)を思い出す。
<えんぴつをもったとたん「ゴォーッ、ガガガッ」耳をつんざくものすごい音。先生の声が聞こえなくなる。みんなの声も聞こえなくなる。ぼくは、「もうどうでもいいや」と、えんぴつをなげた>
あれから何十年、基地の見える状況が変わらないどころか、機体の一部まで落ちてくる。だったらどうだろう。基地の存在そのものに反対している方から批判が出ることを覚悟で、私が言い続けていることに耳を傾けてもらえないだろうか。
普天間周辺で本来、人が居住できないとされるクリアゾーンにある普天間第二小などの公共施設は18。人口は3600人。世帯数にして814だ。さまざまな計算方法があるだろうが、普天間小など学校や幼稚園など公共施設を別の場所に移しても100億円はかからないはずだ。いや、814世帯全部に転居してもらったところで300億円弱ですむのではないか。
もちろん単純に比較できないが、東京五輪の有明アリーナの建設費は440億円。沖縄の人がことあるごとに口にする「命どぅ宝」、命こそ宝もの。そしてBEGINが歌う「島人ぬ宝」、♪この島の空を ぼくはどれくらい知っているだろうか…が、浮かんでくる。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年12月19日掲載)
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