胸に抱いてゴール目指したい言葉
− ラグビーとiPS研究の友情 −
大相撲の暴力事件に、政権からゴミの腐敗臭が漂ってくる森友疑惑。蹴飛ばしたくなるニュースばかりの中、さわやかな風が運んできたような仕事をさせてもらった。きのう4日発売の週刊現代のインタビュー記事で<友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」>(講談社)への私の思いを語らせてもらった。
平尾さんは言うまでもなくW杯日本代表監督もつとめた伝説のラガーマン。そして山中さんはiPS細胞研究のノーベル賞学者。平尾さんの1つ年上で医学部生時代はラグビー部員。もとより、そんなおふたりと私を結びつけるものはない。ただ、平尾さんは山中さんの懸命なサポートの甲かいなく昨年10月、肝内胆管がんのため53歳の若さで亡くなられた。私自身3年前、まったく同じがんの手術を受けていて、週刊現代の編集者はそんなささやかな縁で、私が抱くふたりの友情への思いを聞きにきたようだ。
対談がきっかけになった平尾さんと山中さんの交流は意外と短く、わずか6年半。だが、うらやましくなるような関係を山中さんは平尾さんを見送ったあと、こう記している。
<僕もきみと一緒に過ごせて最高に幸せでした。平尾さんありがとう。そしてきみの病気を治すことができなくて、本当にごめんなさい。また、きっとどこかで会えると信じています。そのときまでしばらく…>
「友情」には、平尾さんが折りにふれて話した言葉がちりばめられている。たとえば「人を叱る時の四つの心得」。
<─プレーは叱っても人格を責めない─あとで必ずフォローする─他人と比較しない─長時間叱らない─>
ラグビーとiPS研究。環境は違いながらも、平尾さんと山中さんはこんなことも話し合っている。
<ラグビーは個人競技の部分が圧倒的に多いと思うんです。チームワークというと、「助け合い」ときれいに回答しはるけど、素晴らしいチームワークは、個人が責任を果たすこと。助けられている奴がいるってことは、助けている奴がいるわけです。強いチームというのは、そういう奴が一人もいない。それが大事な姿勢だと思うんです>
グラウンドや研究室だけでなく、みんながしっかりと胸に抱いてゴールを目ざしたい言葉だ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年12月5日掲載)
|