悪徳の中でも悪質「不安商法解散」だ
− アレヨ、アレヨと28日臨時国会冒頭 −
確かにルール違反ではない。ただし、決してフェアな試合ではない─。
半月前には与党の議員の頭の隅にさえなかった衆院解散。アレヨ、アレヨという間に日程まで決まって、テレビのスタジオで私がこうコメントをすると、安倍さんが白いと言えばカラスも白い政治評論家の面々が「政党人が党利党略を考えるのは当たり前。フェアでないとは何事だあ」と目をむいてこられる。
だけど、ここは党利党略の意味合いを冷静に考えて、民進党のゴタゴタや新党準備、これら野党の態勢が整わないうちに。それに森友、加計のモリカケ問題で醜態をさらさないうちに。さらには来年、追い込まれ解散にならないうちに…。どれをとっても、これは「党利党略を考えて」ではなく、「党利党略しか考えない」結果ではないのか。
この2つは似ているようでまったく非なるもの。企業の利潤追求は、なるほど当たり前のこととして、お金もうけを考える企業と金もうけしか考えない企業。後者を社会が決してフェアな企業として受け入れることはない。私はそれと同じことを言っているだけなのだ。
これに加えて先日、女性週刊誌からやはり解散について聞かれたときには、「聞こえは悪いけど、これは不安商法解散だ」とコメントさせてもらった。
お年寄りに「そのうち年金は打ち切りになる」と言って危ない投資話を持ち込む。おなかに赤ちゃんのいる女性に「このお守りを肌につけておかないと流産してしまう」。リフォーム業者が家の外から「シロアリで半年後には土台が崩れるぞ」と大声で叫ぶ。いずれも不安をあおって、相手を自分の思うがままの方向に誘導する。悪徳商法の中でも最も悪質とされるのが、この不安商法なのだ。
北海道襟裳岬上空を通過した北朝鮮のミサイルで早朝、長野までJアラートを鳴らし、関西の小学校までもが子どもを机の下に潜り込ませて避難訓練。総理が言わないまでも、与党議員の口を突いて出るのは「北の脅威が目の前に迫っているときに、野党に任せて国民の命を守れるのか」。
ともあれ、あさって28日の臨時国会冒頭、国会は解散、議員は一斉に選挙区へと散っていく。吹く秋風は追い風か、はたまた肌に冷たい向かい風か─。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年9月26日掲載)
|