絵に描いた餅よりまず政権
− 民進党にこそ聞いてほしい −
今週金曜日、9月1日は民進党の代表選挙。だけどメディアを含めて関心はいまひとつ。私が出演しているニュース番組でも、一騎打ちになった前原誠司さんと枝野幸男さんの論戦をほんの数分取り上げる程度だ。代表選より、党そのものがどうなるかの方が関心が高いようだ。共産党などとの野党共闘や原発の即時停止、さらには連合との関係をめぐって、分裂もあるとする見方が消えないのだ。
だけど朝日新聞の世論調査では「政権交代が可能な党は必要」と8割の人が答えている。そんなとき、思い浮かぶのは憲法学者の小林節さんの「絵に描いた餅論」である。民進党の人にもぜひ聞いてほしい。
小林さんは慶大教授時代から強固な改憲論者だったが、「立憲主義の『り』の字も知らない安倍政権」にあきれ果て、この政権には改憲の資格なしと、いまでは強烈な護憲論者。シンポジウムなどで何度かご一緒させていただいたが、テーマが安倍政権の対立軸となると、その小林節(ぶし)は、ますます歯切れがよくなる。それが私が勝手に名付けた「絵に描いた餅論」なのだ。
いわく、政権も取っていないくせに何が政策論争だ。何が路線の違いだ。そんなものは、お互い画用紙の上に餅の絵を描きっこして「お前の餅はここがいびつだからうまそうに見えない」「あんたの餅はここが曲がっていて、食う気にならない」と、けなし合いしているようなものじゃないか。いつまでたっても食えない餅に、そんなことを言い合っていてどうするんだ。いいかげんに目を覚ませ。まずは絵に描いたものではなく、食える餅を手に入れろ。とにかく政権を取りに行くことだ。いつまでも食えない餅を見せるんじゃないっ─。
まさにその通り。番組で、代表選の前原さんと枝野さんの論争を取り上げるたびに、私も小林さんの了解はとっていないが、この論を展開させていただいている。
えっ、何か、ご質問が?
政権を取ったあとに、政策や路線の違いで分裂されたらどうするんだ。国政が大混乱して、そっちの方がたまらないですって?
あのですね、目の前のうまい餅を毎日たらふく食えるのに、だれがそんな席を立つものですか。そう、いまの自民党を見たら、よくわかるじゃないですか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年8月29日掲載)
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