いつまでも被災者でいられない
− 東北の今、そして明日 −
少し遅れてしまったが、15日、仙台の東北福祉大で開いた「〈東北の今〉を語ろう! そして明日へ」のシンポジウムの報告。
猛暑の中、大勢の市民が詰めかけてくれて熱いトーク。被災者、被災地へのそれぞれの思いが駆けめぐった。岩手・陸前高田の戸羽太、宮城・気仙沼の菅原茂両市長は、最初からこちらが勇気づけられる力強い言葉。折しもこの日は九州北部豪雨から10日。まだ10人以上が行方不明だった。
「この国に住む限り、だれが被災者に、どこが被災地になっても不思議ではない。私たちはいつでも被災者のみなさんを安全に受け入れる用意があります。そしてみなさんはぜひ、日ごろから被災者にならない努力をしておいてください」
3連休初日のこの日は、豪雨被害の九州に5000人を超えるボランティアが入ったという。俳優の柴俊夫さんは復興支援の「NEVER FORGET東北」を立ち上げ、各地でイベントを開いている。
「被災者への気持ちさえあれば、だれでも、いつでも、どこででもできるのがボランティアなのです」
その被災地をまさに「NEVER FORGET」、南三陸ホテル観洋のおかみ、阿部憲子さんは地元で語り部バスを走らせている。
「観光気分だっていいんです。その目で見て、その耳で聞いてください。何かが変わるはずです」
そんな中、福島第1原発事故の影響をもろに受け、この3月、避難指示が解除になった地域でも住民の帰還はわずか2割。桜井勝延南相馬市長の言葉に会場は静まり返った。
「事故が起きたら、国も東電も絶対に責任を取りません。結果、住民同士がいがみ合い、この6年、福島の市町村でかなりの数の首長のクビがすげ替えられました」」
だが桜井市長は、もう振り返るのはやめようと言う。
「国が最先端の科学と言った原発にやられた。ならば今度は最先端の技術にかけよう。陸に、空に、海に大活躍するロボット開発の先端基地としてロボットテストフィールドを南相馬に整備するのです。いつまでも被災者、被災地でいるわけにはいかないのです」
防衛省に、加計問題。目を覆いたくなる中央政界を離れ、ひたすら耳を傾け続けた東北の1日だった。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年7月25日掲載)
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