憲法と共に育った終戦の年生まれ
− 満塁の走者背負って投げ続ける −
およそ詩心とは縁の遠い私に「俳句界」という雑誌から対談の依頼があって、タイトルを聞いて納得した。「佐高信の甘口でコンニチハ!」。どこが甘口なものか。激辛評論で知られる佐高さんのご指名で2005年の初回、筑紫哲也さんから、俳句との縁にかかわらず、阿川佐和子さん、椎名誠さん、石川さゆりさん…バラエティーに富んだゲストで130回も続くコーナーだ。
ここ数年はご無沙汰だが、佐高さんとは30年近いおつき合い。そんな私が、なぜ、いまなのか。互いに胸のうちはわかっている。
のっけから「いやあ、こんなひどい政権は見たことないよ」。対談は最近では「どアホノミクスの正体」、「お笑い自民党改憲案」といった本を出している佐高さんらしいひと言から始まった。特定秘密保護法に安保法制、そして共謀罪。下ならしがすんで、いよいよ憲法改悪が見えてきた。佐高さんと私はともに1945年、終戦の年の生まれ。同学年にNEWS23の元キャスター岸井成格さん、作家の宮崎学さんも同い年。私の学生時代からの友人だ。
その宮崎さんは最近、顏を合わすたびに「俺たちは、いまの憲法とともに育ってきて、その憲法とともに死んでいく。だとしたらなんのための人生だったのか」と、ため息をつく。
ひとつ上の世代に亡き筑紫さん、本田靖春さん、黒田清さんという先輩を持ち、本来なら私たちが中継ぎでしっかり抑えなければならないところを、「こうまで打ち込まれるとはなあ」というのが互いの思いだ。
だけど、対談の途中で大事な女性を忘れていたことに気づいた。吉永小百合さんも終戦の年の生まれ。彼女は原爆詩の朗読で全国を走りまわる、その理由についてこう語っている。
「私たちが生を受けた年は、長い日本の歴史の中で、生まれてきた命を死んでいった命が上回ってしまった年なのです。私は、そのことに何かの使命を感じざるを得ないのです」
対談は「近いうちに軽く飲もう」「ああ、待ってるよ」という定番の言葉で終わった。だが、「弱いから群れるのではない。群れるから弱くなるのだ」という言葉が好きな佐高さん。しばらくはお互い、満塁の走者を背負いながら汗を飛ばして投げ続ける。そんな姿が胸に浮かぶのだった。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年7月4日掲載)
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