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新聞 フラッシュアップ


読売の記事は自爆行為では
− 文科省・前次官の「疑惑」掲載 −

 記者時代、耳にした嫌な業界用語を思い出した。「ワケアリ」「マル是」。ある筋に義理があったり、依頼されてどうしても掲載しなければならないワケのある記事。上層部からの指令で是非とも載せないとならない記事。どっちにしたって記者はおもしろくない。
日刊スポーツの実際の記事画像
 どうしてこんなことを思い出したのか。文科省の前川喜平・前次官が加計学園をめぐる疑惑文書を「本物」と認める記者会見を開<3日前の22日、読売新聞が〈前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜>という記事を掲載。テレビ、雑誌から「この時期に、なんでこの記事なのか?」と、相次いでコメントを求められた。

 たしかに読めば読むほど「この時期に」奇妙な記事だ。そもそもこのバー、違法ではないし、摘発されたわけでもない。前川前次官も法を踏み外したわけではない。だが読売は事件記事を装いつつ、「教育行政のトップとして不適切な行動に対し、批判が上がりそうだ」と大演説をぶっている。だったら、これから殺人事件では「犯人に世間は怒るはず」。交通事故なら「運転手は被害者に謝るべきだ」と、いちいち書くのか。

 もちろん読売は、官邸や政権との関わりは全面否定するだろうし、私もそう信じたい。だが、こうしたワケアリ、マル是の記事は簡単に見破ることができる。読売に限らず、朝日、毎日といった全国紙は東京のほか、大阪、福岡に本社、札幌などに支社を置いて、独自の紙面作りをしている。だから、事件事故でも掲載されていないこともあれば、記事の段数も違ってくる。

 だがワケアリ、マル是は、どこの紙面にも同じ大きさ、同じ見出しで掲載されていることが絶対のお約束。だって一国の総理が「○○新聞を熟読しろ」と言うことさえある時代。そんなとき大阪の読者から「ウチとこ、そんな記事カケラも載ってまへんでぇ」では格好がつかないではないか。

 それにしても全国紙の一角が時の政権の御用紙に成り下がるのか。先日、週刊文春の新潮広告盗み見の件では、「週刊誌の自殺行為」とコメントした。だが今回の読売の記事は、新聞メディアに対する自爆行為ではないのか。ワケアリもマル是も聞きたくもないし、言わせない。忖度とは無縁の、そんな記者はいないのか。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年5月30日掲載)



読売新聞(Wikipedia)
 https://ja.wikipedia.org/wiki/読売新聞
前川前次官問題で“官邸の謀略丸乗り”の事実が満天下に!
読売新聞の“政権広報紙”ぶりを徹底検証|LITERA/リテラ

 http://lite-ra.com/2017/05/post-3192.html
権力とディナーする新聞社に、黒田清が言い遺していたこと | 武田砂鉄(ハフポスト)
 http://www.huffingtonpost.jp/satetsu-takeda/yomiuri-shimbun_b_4671071.html


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