桜散らすな どす黒い共謀罪
− 絶滅危惧種保護法まで入れるズルさ −
これまで耳にした中で、一番すてきに感じたCMは「桜の開花がニュースになる国って、すてきじゃないですか」。
そんな国なのに、こと国会となると景色は一変する。
安倍政権が強引に推し進める共謀罪の審議で、その構成要件の柱となる「準備行為」について野党議員から「お花見なのか、それとも犯罪の下見なのか。違いをどう説明するのか」と問われた金田法相。「えー、そのー、目的が違うということを慎重に受け止めて」と、ブツブツウダウダ。審議はまたまたストップする。
女性たちを深く傷つける性犯罪の罰則強化など大事な法案を後に追いやって共謀罪が審議入りした6日は、大阪・朝日放送の夕方ニュース、「キャスト」で存分にこの法案の危うさを伝えさせてもらった。政府は、過去の法案では対象となる犯罪が676あったものを、テロと関係しそうな277罪種に絞り込んで「市民が共謀罪に問われることは絶対にない」と言い張る。
「だけど、なんで絶滅危惧種保護法まで入っているんですか!」と浦川泰幸キャスターが声を荒らげる。そこは腹黒い官僚の向こうを張って、「意地悪な大谷クンにおまかせください」と、私が引き取った。
沖縄のいまを思い起こしてほしい。髙江の米軍ヘリパッドや普天間の辺野古移設に抗議している人たちは、米兵の犯罪や騒音被害と同時に、北部の森に生息するヤンバルクイナや大浦湾のジュゴンの保護を訴えている。いずれも環境省などのレッドリストに載っている絶滅危惧種だ。だけど基地建設によって生息する美しい森も海もなくなってしまう。だが、その抗議活動を逆手にとって、そこに座り込んだり、海にボートでこぎだすことは危惧種を脅かすとして、保護法違反に問うことは十分に可能なのだ。
加えて参加を呼びかけるビラを配ったり、現地直行のバスを運行させるといった準備行為もあったとして、共謀罪で全員を一網打尽にしてしまう段取りなのだ。
ズルイなあ、汚いなあ、ワル賢いなあ。それに何より、こんなことが日常的にまかり通る、恐ろしい社会が近い将来、やってきてしまうのだ。
花咲き乱れ、鳥が鳴き、海が、ひねもすのたりのたりとする春に、どす黒い共謀罪が襲いかかっている。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年4月11日掲載)
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