糸魚川 ふるさと納税の結び付き
− 大火から復興へ支援続々 −
先週末からニュースはトランプ米大統領一色に塗られていると言っていい。予想より抑え気味だったとはいえ、赤いネクタイ姿で「米国第一(アメリカンファースト)」「再び米国を強く(グレート・アメリカ・アゲイン)」。「既得権層は己の身を守って市民は守らなかった」と、訴えた演説というよりは咆哮(ほうこう)。80人近くの議員が欠席した異例の就任式の会場外では、過去最大のデモで警官が負傷、200人以上もの逮捕者が出た。
新しい大統領を迎える光の部分より、常に最後は「ユナイテッド」(結びつき)、州も人種も民族も一つ。なにがあろうと、それを第一にしてきたアメリカに初めて亀裂が生じた。その影が色濃く出た就任式と評した政治学者もいた。
そうした光と影のコメントを聞きながら、私は唐突というより就任式とおよそ関係ない新潟県糸魚川を思い起こした。
実は日経新聞が「ふるさと納税 光と影」の連載を先週末から始め、糸魚川市に届いた支援の輪を取り上げていたのだ。
言われてみれば、私たちも昨年末のテレビ朝日の「スーパーJチャンネル」のスタジオで、返礼品の糸魚川特選米の「ひすい里」や辛口の地酒、特産の魚醤(ぎょしょう)をテーブルに置いて、ふるさと納税のニュースをお伝えした。
暮れも押し詰まった12月22日の大火。老舗旅館や造り酒屋、計147棟が焼け出された。それを知って全国からふるさと納税の申し込みが殺到。私たちが放送したときには前年の3倍だったが、日経によると、その後も増え続け、火災から10日、大みそかまでで前年の10倍近い3億9000万円が集まった。しかも、その半分以上の人が返礼品辞退という寄付なのだ。
Jチャンネルのスタジオで私は、「どうだろう。いまは気持ちを大事に受け取って、たとえば3年後、5年後、市長の名前で見事に復興した街並みの写真と、少しばかりの名産品をお贈りする。そんな方法もあるのではないか」と話させてもらった。
ファーストともグレートとも縁のない、雁木で知られた雪国の小さな市。そこに寄せられたほっこりとした結びつきの心を大事にしたい。居座るこの冬一番の寒波のなかで、そんなことを思っている。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年1月24日掲載)
|