「凶暴」ユーチューバ―と「共謀」安倍政権
− 年始めのテレビニュース −
毎週金曜日夕方に出演している東海テレビ(名古屋)、「みんなのニュースOne」の今年初めての私のコーナーは、チェーンソーのすさまじい音が流れるVTRで始まった。三重県伊賀市のトラック運転手(27)が宅配の荷物を本人不在で持ち帰られたことに腹を立て、ヤマト運輸の配送センターにチェーンソーを持って押しかけて脅迫。その様子を動画サイト「ユーチューブ」に投稿したとして逮捕された。
東海地方では少し前に、コンビニのおでん鍋にツンツンと声を出しながら指を突っ込んで、その場面を動画サイトにアップした28歳の男が逮捕されたばかり。またまた同類男の登場だ。
チェーンソー男は午前4時にセンターに押しかけ、「ボケ、あほんだらー」と怒声を上げながら、ずっとブオンブオンというチェーンソーの爆音を響かせて乱暴凶暴の極み。とはいえ、男によると、これは配送員を脅すためというよりユーチューブ向けの演出。男は過激なシーンを流してアクセス数を増やしたいというユーチューバーなのだ。そこは、おでんのツンツン男も一緒。それに、同年代で2児の父というのも一緒だ。
ネット上で性懲りもなく繰り広げられるこうした事件。コーナーの最後をコメントで締めくくることになっている私は頭を抱えるばかりだったが、結局、テレビでバカという言葉は禁句だ。コメンテーターは使うべきではない。そのことは重々承知している、とした上で「きょうはひと言『バカ』とだけ言わせてもらう」と締めくくった。
なんとも締まらない締めになった年の初めのテレビニュース。だけど新聞のニュースに目を転じると、各紙そろって「安倍政権、共謀罪今国会提出へ」。こちらは過去3回も国民の強い反対で廃案となっている危ない法律を成立させようとしている。
片やネット上で、少しでも目立とうと罵詈雑言、チェーンソーだってブンまわす凶暴男。片や、なんの気なしにうなずき合い、目配せしただけでも「ひっそりと犯罪行為を計画した」として、有無を言わさず国民をひっくくってしまう危険な法律。それが安倍政権が性懲りもなく出してきた共謀罪だ。
凶暴に共謀―。新年早々このコラムも、締まらないダジャレになってしまったなあ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年1月10日掲載)
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