そこに何を書き込むかが大事
− 日米間に新たな1ページ −
2017年が明けた。私はいつもの通り、京都ですごすお正月。やわらかな日差しの古都の初春。穏やかで平和であることのありがたさを改めてかみしめている。
少し時間を戻すと、2016年最後に伝えたテレビニュースは日本時間12月28日早朝の安倍首相の真珠湾訪問。アリゾナ記念館を背景にした安倍・オバマ米大統領、両首脳の演説だった。
1980年代初め、私は連載記事の取材で撃沈された戦艦ミズーリの上に建つこの記念館を訪ね、花を海に散らして犠牲者の冥福を祈った。星条旗を揚げる兵士たちの柔らかいまなざしとは裏腹に、カメラを構える私に「よくここに来れたものだ」と言わんばかりのアメリカ人観光客の視線がいまも心に残っている。
大戦の開戦から75年、4分の3世紀。それが長かったのか短かったのか。千年の古都で、ふとそんな思いも胸をよぎる。だが、確かなことは日米間に新たな1ページが開かれたという事実だ。安倍首相は「寛容の心と和解の力」と、やや総論的に、オバマ大統領は、がん治療や気候変動の共同研究と並べて「マイアミのスタジアムを沸かせるイチロー選手もいる」と、スポーツも持ち出して具体的に戦後の日米交流を語った。
5月のオバマ大統領の被爆地広島の訪問、そして押し詰まってからの安倍首相の真珠湾。まさしく2016年は、世界史に残る年だったのではないか。だが同時に、それを歴史に刻み込むだけであってはならないという気がする。
日米間で平和への思いが高まる中、半月後には「核能力を強化拡大する」と言ってはばからないアメリカ大統領が誕生する。そのアメリカ軍が沖縄でオスプレイを墜落させ、あろうことか最高指揮官が「住民の上に落とさなかっただけでも、感謝しろ」と言い放っても、抗議のひとつもできない現政権。首脳同士が肩を抱き会ったその日、沖縄では辺野古の基地建設が再開された。決して日米同盟が強固でもなければ対等でもないことを、世界が、両国民が、知っている。
確かに日米間に新たなページ開かれた。だが大事なことはそこに何を書き込むかではないのか。2017年という新たなページ、さて、みなさんと何を書いていきましょうか。そんなことを思う京の初春である。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2017年1月3日掲載)
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