どの国もまともに向き合うはずがない
− 国家の品性も品格もなくなった日本 −
「メディアは、もっと本当のことを伝えようよ」。出演しているテレビ番組で最近、ことあるごとにそうコメントしている。
ロシアのプーチン大統領が安倍首相の地元、山口での会談に臨む前日の番組。「トラフグや金目ダイで心からの、お・も・て・な・し」と説明する官邸記者に私は「言葉は悪いけど、食い逃げが心配」とまぜっ返した。さすがに首相に同行する記者は苦笑いするしかない。
だが結果は2時間半もの遅刻で、底冷えのする中、待ち続けた小中学生の歓迎行事は中止。会談では日本側がひょっとして2島プラスアルファもと期待いっぱいだった北方四島は「両国間に領土問題はない!」とゼロどころかマイナス回答。その一方で「4島で一緒に経済活動しようね」とカネだけはふんだくる。腹が立つより情けなくて、やりきれなくて、涙がこぼれるではないか。
だけど冷静に考えてロシア側に理はないのか。事務レベル交渉でロシアがこだわったのは「日本に主権を渡した場合、日米安保によって4島に米軍基地が置かれることはないのか」だった。
ならば現実はどうか。大統領訪日の直前、沖縄で米軍のオスプレイが墜落、大破した。だが、米軍の準機関紙「星条旗」まで「クラッシュ(墜落)」と書いているのに、首相も稲田防衛相も、だれの顔色をうかがってか「あれは一時着水」。
それどころか翌日、米軍の最高指揮官、ニコルソン中将が言い放った「住民に被害を出さなかったことに感謝しろ。パイロットは表彰ものだ」という暴言どころか妄言に、安倍政権は抗議する気さえない。
その指揮官発言から日をまたいで審議が続いた国会。当然諸外国は、かねて危険性が指摘されていた軍用機の墜落と指揮官発言をめぐって徹夜の審議が続いていると考える。だけど実際は、アベノミクスの破綻で「こうなりゃ、バクチでひと山当てるしかない」と政権が言い出したカジノ解禁法案、つまりバクチ場を作る、作らない、で与野党どころか、仲間内でもつかみ合い寸前の大げんかだったのだ。
こんな自我や自尊心どころか国家の品性も品格もない国と、ロシアならずとも、どの国だってまともに向き合うはずがないではないか。
落ち葉の舞い落ちる音をいっそう寂しく、虚しく感じる2016年暮れである。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年12月20日掲載)
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