「条件つき限定免許」新設を
− 相次ぐ高齢ドライバー事故 −
先週のこの欄で大阪・堺市で4歳の男の子が行方不明になっている件にふれ、こうした子どもが犠牲になる事件に「大人がもっと知恵を絞れないのか」と書いた。残念なことに逮捕された父親は「子どもの遺体を山に捨てた」と自供。あらため怒りが込み上げてくる。
そんな折、今度は横浜で小学1年の男の子(6)が集団登校の列に突っ込んできた87歳の男の軽トラックにはねられて死亡した。報道されている写真の男の子のあどけなくてかわらしいこと。それに対して失礼ながら運転していた男のひどく老いの進んだ姿。一昼夜、どこを走っていたかわからないという。これは車に乗った徘徊ではないのか。
こうした事故だけではない。高速道路の逆走に、スーパーやコンビニ店へ突っ込む事故。その大多数が高齡ドライバーによるものだ。だけど泣くのは被害者だけではない。多数を死傷させてしまった事故では、その年で刑務所行きが待っているし、莫大な賠償金に家族はどん底に突き落とされる。
だが、自治体や警察の「高齡者は免許返上を」の呼びかけに応じるお年寄りは、じつに少ないのが現実だ。
その理由も地方、とりわけ被災地の取材が多い私にはよくわかる。東日本大震災の被災地、町の大きな病院に通うお年寄りは鉄道や早朝バスの廃止で、車がないと前夜の最終バスで出かけて1泊するしかない。スーパーに買物に行くにしても、息子や孫が帰ってくるのを待つしかない。そんなわけで、おいそれと「車も免許証も手放します」とはいかないのだという。
じゃ、どうするか。じつは私は、もう何年か前から条件付き限定免許の新設を提唱しているので、ちょっと耳を傾けてほしい。
何も難しいことではない。たとえば「○○町から○○大学病院往復のみ可」とか「一般道のみ可。高速道自動車専用道走行不可」。あるいは「日没から夜明けまで運転不可」といった免許証にするのだ。そのことによって慣れた道の運転だけで、逆走の危険がある高速道路には入れない。家族も夜、出かけようとするおじいちゃんを限定免許を理由に止めることができる。
どうだろう。超高齢化社会を生きる大人たちが、未来を担う子どもたちのために、ここは1歩引いてみようではないか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年11月8日掲載)
|