政治と民心が離れた国に未来はあるか
− 地方議員も国会も妙な話題ばかり −
「もう面倒なので、番組の中に『きょうの地方議員』というコーナーでも設けますか」と、半ば本気でテレビでコメントした。富山市議に始まった政務活動費の不正受給。まあ、近ごろの天候と一緒。雨の降らない日と地方議員の不正がバレない日はないといっていい。だけど、ぼやいてばかりいるうちに、私たちの社会に未来はない。本気でそんな思いになってきた。
少し前にホヤホヤのママたちと食事をする機会があった。早くも親バカ。この子は将来こんな道に、あんな仕事に、と夢はふくらむ。
だけどお母さんたちから、私たちの地域のために、この国の未来のために、という言葉はついぞ聞かれない。それどころか都議会が話題になっただけで、なんとなく間ができる。もし将来、この子たちが政治を口にしたら親たちは「なんでそんな道に」とはがい締めにしてでも止めるのではないか。
でもなあ、だったらこの社会に豊かな未来なんてあるのだろうか。そんなことを思っていると、今度は地方議会ではなく、国会が妙なことで話題になった。
臨時国会の所信表明演説で、安倍首相が海上保安庁、警察、自衛隊に対して「今、この場所から心からの敬意を表そうではありませんか」と呼びかけ、自民党議員がスタンディングオベーション。これに対して自民党の議員からも「あれはない」。
野党は小沢一郎氏が「異様な光景だ」とコメント。衆院予算委でも民進党の細野豪志氏がただすと、首相は、あの場面が北朝鮮になぞられたことがよほど腹に据えかねたのか、「どこの国と同じだと言うんですか!」とキレまくったという。
ただしこの一件、首相の肩を持つ気はないが、テレビ局の外報記者に聞くと、海外のメディアは、みんなに一斉に顏を上げさせて拍手を促し、自分はおへその上あたりでポンポンと手をたたく、あの姿に、北朝鮮ではなく中国の国家主席を思い浮かべているという。
どっちのまねだか知らないけど、首相を仰ぎ見て憑かれたように拍手する議員。はっきりしていることは、どこを捜してもわが息子、わが娘をぜひ、あの仲間に、という親はただのひとりもいないということだ。政治がこんな国に、明るく澄んだ未来などあるわけがない。
台風の影響もあって、今週もまた雨続きだという。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年10月4日掲載)
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