歌は世に連れ盆踊りも世に連れ
− ビューティフルサンデー何でやねん −
「山の日」の休日ができて、いつもの年より少し早く、ふるさとに帰って盆踊りの輪にという方もおられるのではないか。と、唐突にこのコラムにはあまり縁がなさそうな盆踊りが登場したのには少しわけがある。
私が木曜日に出演している大阪・朝日放送の「キャスト」(午後4時58分〜)に「何でやねん!」というコーナーがある。「料理についてくるパセリや刺し身のツマは食べるべきか否か?」なんてテーマが、ニュース番組に登場するのは何でやねん! と聞きたくなるようなネタをいじり倒すのだ。
先週のテーマは「兵庫県伊丹市の盆踊りは、どこでもビューティフルサンデーを踊っているのは何でやねん!」。私が子どものころの東京の盆踊りといえば、いまはヤクルトの応援歌、東京音頭が定番だった。その東京音頭、先日、毎日新聞の江戸っ子記者、牧太郎さんがコラムで、東京音頭には消えた2番というのがあって、歌詞は♪東京よいとこ 君が御稜威(みいつ)は日の本照らす…。御稜威とは天皇のご威光のこと。それが戦後、GHQににらまれて3番がいまの2番に繰り上がったと書かれていた。
へえーそんなことがあったんだ、と驚いたばかりのところに伊丹の盆踊り。伊丹といえば、私が住んでいる大阪・豊中市の隣。なんとそこでビューティフルサンデーとは、何でやねん!
番組によると、初代NHKのうたのおにいさん、田中星児さんが歌ったこの曲が大ヒットしたのが40年前の1976年。日本が経済成長を続けるなか、隣の大工業都市、尼崎には若い労働者があふれ返り、そんな若者たちも踊れる曲をということから始まって、いつの間にか飛び火した伊丹の方に定着したという。
そうした例は外国人労働者の多い岐阜県美濃加茂市の盆踊りで踊られているダンシングヒーローなど、全国にいくつかあるという。まさに歌は世に連れ、盆踊りも世に連れ。それにしても伊丹のビューティフルサンデー。♪さわやかな日曜 降りそそぐ太陽 イッツ ア ビューティフルサンデー…。
浴衣のお尻と腰を少し揺らして、色っぽくて楽しそうなこと。どこかの国の宰相が拳を振りあげて叫ぶ「美しい日本」なんかより、よっぽど楽しくて、ビューティフルなニッポンの夏、と思えてくるのでした。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年8月9日掲載)
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