凶行に怒りと共に去来する一つの詩
− ダウン症の子持つ母 心の拠り所 −
19人の命が奪われた「津久井やまゆり園」での凶行、半世紀近く事件取材をしてきて、これほどの怒りと憤りにかられたことはない。
「全国手をつなぐ育成会連合会」の呼びかけをはじめ、障害のある方へのさまざまなメッセージが出されている。私も夕方のニュース、「スーパーJチャンネル」で渡辺宜嗣さんとともにその一部を紹介しながら、事件の一報を聞いてから胸に去来している、ひとつの詩にふれさせてもらった。
20年ほど前、ワイドショーに出演していたころ、ダウン症の子どもを持つお母さんたちが心のよりどころにしているというステキな詩を教えていただいた。番組で女性アナウンサーに朗読してもらったところ、「もう1度、聞かせて」という声が次々届き、同じ詩を再度、流すことになった。アメリカの障害者療養施設のシスターが作られ、日本では大江祐子さんが訳されているこの詩、その一部を紹介させてもらいますね。
『天国の特別な子ども』
─ “また次の赤ちゃん誕生の時間ですよ”。
天においでになる神様に向かって 天使たちは言いました。
“この子は特別な赤ちゃんで たくさんの愛情が必要でしょう。
この子の成長は とてもゆっくりに見えるかもしれません。
だから この子は下界で会う人々に
とくに気をつけてもらわなければならないのです。
もしかして この子の思うことは
なかなか分かってもらえないかもしれません。
何をやっても うまくいかないかもしれません。
ですから私たちは この子がどこに生まれるか
注意深く選ばなければならないのです。
この子の生涯が しあわせなものとなるように
どうぞ神様 この子のためにすばらしい両親をさがしてあげてください ─
その二人は すぐには気づかないかもしれません ─
やがて二人は 自分たちに与えられた特別の
神の思召しをさとるようになるでしょう ─
柔和でおだやかなこの尊い授かりものこそ
天から授かった特別な子どもなのです”
全文を紹介できないのが残念だが、ネットで検索すると、ヘブンブルーを背景にしたりして、美しい詩があらわれる。
成長はゆっくりで、思うことはなかなかわかってもらえなかったかもしれない。そんな柔和な命に、しばしご一緒に手を合わせたい。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年8月2日掲載)
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