「1人ひとりが大切にされる」沖縄に
− 6・5万人県民大会に思う −
まだ手の甲から消えない日焼けのあとを見ながら、沖縄を思っている。23日は沖縄慰霊の日。その前の19日の日曜には元海兵隊員の米軍軍属(32)による女性暴行殺害事件に抗議する県民大会を取材してきた。
梅雨明けの猛暑というより酷暑の中、6万5000もの人が集まった県民大会。涙で声を途切らさせながらスピーチした大学生の玉城愛さん(21)の「日本本土にお住まいのみなさん、今度の事件の『第2の加害者』は、あなたたちです」という訴えが、さまざまな議論を呼んでいるようだ。だけど私には玉城さんの「みなさん、幸せに生きるって何なのでしょうか。一人ひとりが大切にされる社会とは、どんな形をしているのでしょうか」という問いかけが、いまも心に残っている。
駆け足の取材のなかで、元琉球新報記者の大学の先生、沖縄タイムスの記者、7月の参院選で初めて投票する18歳の女子学生。いろんな方にお目にかかった。みなさんに共通していたのは、「もう県民大会はこれを最後にしたい」という願い。そしてそこには2つの思いが込められていた。1つはもちろん、こんな事件をもう起こさせてはならないという思い。2つ目は何度県民大会を開いても国の対応を含めて何も変わらないなら、何らかの行動に出ようというものだった。
それにはまず有効な県条例を作る。日本人が基地への立ち入りを禁止されているなら、米軍兵士が基地外に出る際には“入国審査”をする。それによって女性暴行などの前歴者、執行猶予中の者。さらには飲食店などでのトラブルの常習者。こうした人物の基地からの外出を止める。その方が短期間の外出禁止令なんかより、よほど効果的だ。
さらには基地外で暮らす軍幹部、軍属に住民登録を義務づけ、住民税も課す。そのことで今回の事件の軍属のような基地外居住者の実数も、なんとかつかめることになるという。
この行動のいいところは、何も沖縄でしか実施できないわけではない。本土の三沢、厚木、横田、横須賀、岩国…、基地の町のどこでも条例を作ることはできる。わが町の議会が数千キロ離れた沖縄を援護できる。本土は、ささやかだけど、こんなふうにして「一人ひとりが大切にされる沖縄」へのお手伝いができるはずだ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年6月28日掲載)
|