私たちも憲法井戸端会議をやろう
− 不思議なクニの争点隠し −
明日22日は参院選の公示。私たちメディアは公正中立とやらが求められ、しばらく窮屈な日が続く。だからその前に言っておけというわけではないが、いつもおかしいなと思うのは、選挙が終わるまで身をひそめていた大事なテーマが選挙がすむなりニョッキリ顏を出すことだ。今回だって与野党ともに3分の2議席の攻防といっているのに、政権政党から改憲の声が聞こえてこない、不思議なクニなのだ。
そんなとき、いまあちこちで上映会が開かれ、話題になっている映画、「不思議なクニの憲法」を見て、松井久子監督にインタビューしてきた。松井さんと私はともに、いまの憲法と同じころに生まれ、そして育ってきた。といって憲法は大事だけど、ガチガチの護憲派というわけでもない。
「だってそうでしょ。たとえば44条。『婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し…』。ならばLGBT、レズやゲイの人たちはどうなるのよ。変えるときには、変えなくっちゃ」。そういえば、松井さんの作品には、フェミニストを描いた「何を怖れる」があった。変えることなんか怖(おそ)れていないのだ。
映画は「ふつうの人に権利を持たせてくれた憲法ができたと聞いて涙が出た」という94歳の瀬戸内寂聴さんや、沖縄の基地の町、宜野湾市出身のSEALDsの大学生。北海道・千歳の自衛隊員の家族など合わせて27人が登場してワイワイガヤガヤ、まさに憲法をめぐる井戸端会議だ。
「とにかくみんな憲法を自分のものと思って考えてほしいの。だってトランプやヒラリーは知っていても憲法を知らないなんて不思議なクニはないでしょ」
映画には昨年、衆院憲法審査会で「安保法制は違憲だ」と言い切った長谷部恭男早大教授や、その長谷部さんを自民党推薦として呼んで安倍首相の逆鱗にふれ、党の憲法改正推進本部長をクビになった船田元衆院議員も登場。じつは船田さん、長谷部教授が安保法制は違憲と言うことを承知のうえで呼んだのだとか。安倍さんが聞いたら、いまからでもワナワナと震えてきそうな新証言も飛び出している。
ともかく投票日まで、私たちも負けずに憲法井戸端会議をやろうじゃないか。またまた争点隠しにひっかかる不思議なクニの有権者にならないために─。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年6月21日掲載)
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