心に響いた裁判官の説諭
− 清原さん判決に更生への思い −
「決してあなたは1人ではありません。お父さんや親戚の人、支援者、法廷に出廷してくれた佐々木さん、…全国の根強いファンがあなたの更生を願っています。また待っている息子さんのためにも…」
私のこのコラム、毎週火曜掲載なので先週火曜日の話は、どうしても旧聞になってしまうが、やはり書いておきたい。清原和博さん(48)の覚醒剤事件で東京地裁の吉戒純一裁判官は執行猶予のついた判決を言い渡したあと、こんな言葉で清原さんに説諭した。
じつは、私は判決前の番組で「裁判官によっては説諭がない場合もあるけど、清原さんには、ぜひ、ひと言」と、コメントしていた。そして昼からの公判、吉戒裁判官は「覚醒剤をやめるのは容易ではありません」と前置きしたうえで部外者の私たちの心にも響く、こんな言葉で清原さんを諭したのだ。
私が「清原さんに説諭を」とコメントしたのには少しわけがあって、じつは私の胸に1990年代、あるミュージシャンが起こした覚醒剤事件があった。紅白歌合戦にまで出場したこのミュージシャンの裁判。論告求刑の際、なんと女性の検事が「私もあなたのCDを何枚か持っています」と語り始めたという。そして自らの司法試験に向けた猛勉強を思い出したのか、少し声を詰まらせながら、「聞くと、元気にさせてもらえますよね」と、つけ加えたのだ。日ごろは被告の罪状を指弾する検事のこの言葉。あとあとミュージシャンは「びっくりした。でも、いつまでも心に残った」と話していたという。
もちろんこのことがあったからだけではないだろうが、ミュージシャンはその後、見事に立ち直り、数年後には再び紅白歌合戦出場を果たしたのだった。
清原さんの判決があった日の夕方のニュース番組。私はこのエピソードを紹介しながら、ここまでお話ししたら、このミュージシャンがだれなのか、わかっておられる方も多いのではないか、としたうえで「心が折れそうになったとき、清原さんもぜひ、このミュージシャンのCDに耳を傾けてほしい」と、コメントさせてもらった。
「どんなときも」…「北風」に負けることなく、また球場に戻ってきてほしい。全国の根強い野球ファンの1人として、そう願っている。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年6月7日掲載)
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