ネットに溢れるボランティア中傷…情けなく悲しい
− 熊本地震から1カ月 −
熊本地震は、きのう16日で本震から1カ月となった。私も遅ればせながら大型連休最後の週末、駆け足で熊本市、益城町、西原村、南阿蘇村とまわってきた。
あまりの復興の遅れに驚くと同時に、いまはただ、やりきれなさと寂しさが胸を覆っている。東日本大震災のとき、あれほど人々が口にした「絆」という言葉が、このたびは、なぜ聞こえてこないのか。いくら東日本大震災復興のための応援ソングだったとはいえ、あの「花は咲く」のメロディーは、熊本地震では流れることはないのか。
聞けばその土日、派遣依頼が2000件を超えていたのに来てくれたボランティアは数百人。当初、行政の不手際もあって、せっかく来てくれた人が仕事に就けなかったということも響いているが、地元の記者に聞くと、それ以上にネット上にはモンスターボランティアなんてレッテル貼りが登場。被災者と一緒の笑顔がテレビに映っただけで、「はしゃぎ過ぎ、目立ちたがり」といった中傷が相次いで、早々と引き揚げるボランティアも少なくないというのだ。
東日本大震災のときは発生から数カ月がたっても、なんとか軍団やら、俳優のなんとか様一座のバーベキューに、カレーや豚汁の炊き出し。少女アイドルグループは4、5人ずつのユニットでライブのステージ。つかの間、被災地の浜辺に人々の笑みがはじけた。
だけど熊本にその姿はない。いや、正確に言うと、私が訪ねた避難所には、ジャニーズ系のN君、大物落語家のTさん、お笑いの0君がきていたのだが、みなさん、そろって飛び入りで、予告はなし。あとで知ってがっかりする人がいても、先にブログなどに書き込むと、これまたネット上に「売名、人気取り」といった中傷があふれ返るという。
情けない、悲しくて、哀しい。いつからこの国の人々はアラ探しや人をおとしめることに、ゆがんだ喜びを感じるようになったのか。絆という言葉がよみがえることは、もうないのか。お互いさまと声をかけあった、あの日にはもう戻らないのか。
♪誰かの歌が聞こえる 誰かを励ましている 誰かの笑顔が見える…花は花は花は咲く わたしは何を残しただろう…
こんな歌声が、再びこの国を覆ってくれる日は果たしてくるのだろうか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年5月17日掲載)
|