本文へジャンプ サイトマップ 検索 ホームへ移動
ホーム 更新情報 Webコラム スクラップブック 黒田清JCJ新人賞 活動 事務所

フラッシュアップのコーナートップへ
旅路 フラッシュアップ


現代版「何でも見てやろう」
− 8カ月半で地球半周した高校生 −

 進学に就職。希望の春、と先週書いたが、東海テレビ(名古屋)で会った吉野裕斗君は、あどけなさを残しながら、じつは名古屋大付属高の4年生。昨年1年間、休学していたのだ。
日刊スポーツの実際の記事画像
 5月に日本を出てフィリピンやインドなどアジアの国々、ルワンダやジンバブエのアフリカ、それにアルゼンチンなど南米。8カ月半かけて地球をぐるりと半周してきたのだ。私たちが高校生のころというと1961年、大ベストセラーになった小田実さんの「何でも見てやろう」。欧米へのあこがれもあって、むさぼるように読んだ。だが、いまどきの高校生の目は発展途上国に。現代版、「何でも見てやろう」は私の胸にも新鮮な風を吹き込んでくれた。

 フィリピンの街角。仲良くなったはだしのストリートチルドレンに、大道で漢字を書いたパフォーマンスでかせいだチップで買ったサンダルをプレゼントした。大喜びだった子どもたち。だけど次に会うと、大勢仲間を連れてきた。この兄ちゃんは何かくれる人。この子たちにもサンダルあげてよ。何か食べるものをちょうだい。お金がほしいよ。「ものをあげるということは、こういうことになるんだと身にしみて感じました」。

 吉野君自身、もちろん親の金で世界の旅に出たわけではない。企画書を作り、企業や経済人の勉強会をまわって何度も頭を下げ、趣旨をわかってくれた人にお金を出してもらった。「ただお金をくださいではダメ。支援とか援助って何かということを国内にいるときから勉強したつもりです」。

 ストリートチルドレンに日本のNPOなどがまずすることは、子どもたちを収容する施設の建設だ。だけど路上しか知らないチルドレンは、建物に入れられるということは大人に束縛されて何かをさせられることとしか思わない。まず、雨や風にさらされないことが、どんなに楽かということを教えないといけない。 

 ネパールの震災現場では、はるばる日本からやって来たボランティアを誇らしく思っていると、「ただで働く彼らが、ぼくの仕事を取っていってしまった」と、ベソをかいている若い労働者に会った。

 小田実さんから半世紀。いまの高校生の「何でも見てやろう」は、これからの日本の行き先を指し示しているようでもあった。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年4月19日掲載)



of 高校生世界一周単独バックパッカー
 http://sekai-yoshino.planet.bindcloud.jp/
何でも見てやろう (講談社文庫) 感想 小田 実 - 読書メーター
 http://bookmeter.com/b/4061315838
旅好きが絶対!絶対!絶対に読んではいけない7冊の本(One Butterfly effect)
 http://yuma-z.com/blog/2013/04/travel_book/


戻る このページのトップへ