ふるさとの学生を応援する返礼なし納税
− 助け合い希望の春スタート −
春。テレビ局では、新番組のスタート、そして番組改編の季節。メーテレ(名古屋)の「ドデスカ!」(月〜金曜日午前5時59分)のスタジオで私は、あの東日本大震災の年の4月からなので、この早朝番組も6年目になるのかと、ある種、感慨にふけっていた。
視聴者のみなさんが次々に起きだしてくる時間帯。ひと足早くこちらがエンジンを温めておかないと、目と耳を向けてくれない。この朝の新聞紹介コーナーの話題は、なんといっても卓球の福原愛選手。日刊スボーツの見出しは、世のおじさま、おばさまの気持ちを代弁して「お嫁に行っちゃうんだね…愛、結婚へ」。
そのニュースのちょっとあとには、三重県名張市のふるさと納税。卓球ではないけど、番組中は、どんな角度から球が飛んでくるかわからないので気が抜けない。なんとその名張のふるさと納税の返礼品は、5万円以上には体長14センチのヘラクレスオオカブト。1万円だと7センチのオオクワガタなどとなっているという。
このカブトムシやクワガタは市内の業者が繁殖させている特産品とのこと。だけど後日談があって、申し込みが殺到したのと、「生きものを扱うのか」という声もあって間なしに中止されてしまうのだが、じつは私もこのニュースには違和感を覚えていた。
やや唐突だったが、「先日の新聞に、ふるさとの学生を応援する、返礼なしの納税も紹介されていた」とコメントさせてもらった。その根っこには、会ったこともない愛ちゃんを世のおじさま、おばさまが応援する、この日のトップニュースへの思いがあった気がする。
と同時にその少し前、教職員組合が、首都圏の私大生の1カ月の仕送り額は8万6700円で過去最低となり、家賃を引いた1日の生活費は850円。そんな状況で学業よりバイトを優先させる学生も少なくないとする調査結果を発表した。そうしたなか、いまいくつかの地方都市が始めたのが学生奨学金。がんばっている学生のために返礼品なしのふるさと納税をしてくださいという制度なのだ。
大事な息子、娘とカブトムシを一緒にするなという声もあろうが、どうだろう、この制度。入学に進学、就職に、異動。互いに声をかけ合い、助け合い、希望の春、スタートである。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年4月12日掲載)
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