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老人 フラッシュアップ


育児と介護は逆…どこに希望を見いだすか
− 川崎市老人ホーム3人転落死 −

 多くの事件と関わってきたが、冬の深夜、若者がお年寄りを抱え上げて施設のベランダから突き落とす。身も凍る、こんな事件に出会ったことがない。
日刊スポーツの実際の記事画像
 川崎市の介護老人ホームで3人のお年寄りが相次いで転落死した事件で、23歳の元職員の男が逮捕された。私も、もう6年前になるが、90歳を超えた母を医療施設付きのホームで見送った。弟や姉まかせで、めったに面会に行かない親不孝者だったが、私が顏を出すと、スタッフは「あっ、○チャンネルが来た」という。母が入院時、私が出演しているテレビ局のチャンネルを宣伝してまわったそうだ。親バカの母の親不孝息子を迎えてくれたスタッフの笑顔が忘れられない。

 それにしても、しんどい仕事だ。壁に向かって一日中怒鳴っている人。口元に差し出されたスプーンを放り投げる人。だけど、施設での介護を必要とするお年寄りの数は増え続ける。800万人といわれる団塊世代は一昨年、全員高齢者入りした。そんななか、1億総活躍社会とやらを唱える安倍政権は介護離職ゼロを打ち出した。

 だが、医療福祉担当の記者に聞くと、政権中枢にいる政治家でさえ介護離職ゼロの意味をわかっていないという。介護のため泣く泣く職を離れる人をなくすには、まず受け皿となる施設がいる。だけど、いまはその受け皿に穴が開いていて、スタッフがどんどんやめている。そのため16時間勤務も当たり前。1人が夜間40人の介護をすることもあって、耐えられない人がまたやめていく悪循環。まずはこの穴をふさいで、こちらの介護離職者ゼロにすることが先決だという。 

 しかし政府はそんなことには目もくれず、1億総活躍だ、介護離職ゼロだ、と突っ走る。そうなると、お年寄りに寄り添う気もない人たちまで入り込んでしまう。

 もちろん今度の事件は許しがたい。だが、母がお世話になったスタッフの「這えば立て、立てば歩めの育児と、介護は真逆」という言葉が耳に残っている。きのう歩いていたお年寄りが、きょうは車いす。きのう車いすだったお年寄りが、きょうはベッド。そして寝たきりに…。

 そうしたなか、家族が、施設のスタッフが、どこに希望を見いだすか。根本はそこにあるような気がする。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2016年2月23日掲載)



川崎老人ホーム連続殺人事件(Wikipedia)
 https://ja.wikipedia.org/wiki/川崎老人ホーム連続殺人事件
「介護離職ゼロ」を目指す政策と、介護職の給料が安い本当の理由(NAVER まとめ)
 http://matome.naver.jp/odai/2144317552287034001
フジ系ドラマ「いつ恋」は介護労働への偏見生む? 介護福祉士会「意見書」に…(J-CASTニュース)
 http://www.j-cast.com/2016/02/19259088.html


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