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「108+1」70年の平和の鐘ついてみたい
年の瀬、デスクまわりを整理しながら、先日のさわやかなインタビューを思い出している。SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の国際基督教、一橋、上智、日本女子大の4人の若者たち。
安保法制が強行可決された9月の雨の夜の国会前。「民主主義ってなんだ!」のラップのリズムに乗った若者たちの声が耳に残っている方も多いのではないか。じつは私が2015年、失いつつあるものが多かった半面、得たものも多かったと言い続けている、その1つがこの若者たちだ。
何よりピラミッドの落書きの時代から「近ごろの若い者は」と言い続けてきたおっさん、おばさんの意識を変えてみせたことだ。私のまわりでも「あの子らスゴイぞ」と冷やかし半分だった自分を恥じている大人が山ほどいる。と同時に、もう1つうれしいことがある。インタビューした学生が口々に「大人ってスゴイ」と言ってくれたことだ。
法案が通ってしまった明け方、身も心もがたがた震えながら後片付けをしていると、降りしきる雨の中、ベビーカーを押した2人のおばさんの姿が見えた。こんなとき赤ちゃんの散歩でもないだろうし、と思っているとパカッと開けたカバーの下にはおむすびと熱々の沖縄のサンピン茶。「全部で70個ね。100個にしたかったけど、みなさんが引き揚げてしまったらなんにもならないと思って」。
大人ってスゴイと思って、かぶりついた頬を伝わったのは雨だったのか、涙だったのか。
国会前、ひとりずつトランジスタメガホンを持って、思いのままのショートスピーチ。その言葉を、翌日には文字にしてブログに載せてくれている名前も顔も知らない人がいる。「しかも注釈や解説をつけて中高生が読んでも、ちゃんとわかるようにしてくれているんです」。
自称ジャーナリスト。こんなスゴイ大人にもめぐり会ったSEALDsの若者たちの願いはただ1つ。
「70年続いた平和があと30年続いたら、ぼくたち、私たちは50歳。そのとき100年続いた平和の鐘をみんなで一緒に打ち鳴らしたいのです」
2015年の除夜の鐘。若者と大人が手を携えて、今年は108に1つ足して70年の平和の鐘をついてみたい。みなさま、どうぞよい年を。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年12月29日掲載)
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