人任せ、お上にお願い、ばかりでいいのか − 「2015年としくれぬ」 −
お奉行の名さえ覚えずとしくれぬ─
きょうから師走。お奉行さま、お上の名前など知らなくたって、年は暮れていくわい。江戸時代の大坂の俳人、小西来山が浪速っ子の心意気を詠んだとして、いまに伝えられている。
唐突にこんな句を紹介したのには、ちょっとした思いがある。先日の大阪府知事、市長のダブル選挙は、いずれも大阪維新の会の候補がダントツで勝利。知事選に1票を投じた大阪府民の私のところにも「大阪では維新は強いですなあ」「なんでいつまでも橋下人気なんですか」なんて声が聞こえてくる。
その評価はともかくとして、確かに橋下大阪市長の人気なくして、この結果はなかった。ただ、どうにも気になることがある。選挙戦中の街頭インタビューを聞くと「中央政界にガツンと言えるのはあの人しかおらん」「うそつきやって言われたかて、こんな落ちぶれた大阪、なんとかできるんは橋下さんだけやろ」。
テレビで橋下批判をすると、長々とクレームをつけてくる人の大半は、働き盛りのはずの30代、40代。「なんもいいことなかった僕らを、なんとかしてくれそうなのは、あの人しかおらん。なんで文句を言うんや」。
残念ながら、そこには、僕が、私が、なんとかするという思いはまったくない。あなた頼り、人任せ、お上にお願い、ばかりなのだ。
選挙戦がすんで事務所でそんな話していると、女性のスタッフが「それは大阪だけのことじゃないですよ」と声をあげた。なんでも先月行われた朝日新聞の「子どもの貧困を減らすために必要なことは?」のデジタルアンケート。圧倒的に多かったのは「国・自治体の対策」で1092回答中、なんと678。「保護者や身内が頑張る」の77をぶっちぎりで上回った。
もちろん子どもの成育に公的支援は欠かせない。だけど大事な子育てや、子どもにいい環境を提供してあげることが国頼り、自治体頼りで果たしていいのか。そのうち「この子は国が育てたんだから、お上の思うように使わせてもらうよ」なんて時代が来やしないか。 安保法制に、TPP、沖縄辺野古の移設問題に、マイナンバー。なんだかお上が豪腕をふるって民の間を駆け抜けていったような「2015年としくれぬ」。これで、いいのかなあ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年12月1日掲載)
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