巨悪にはほど遠いが検察の出番
— 武藤議員の未公開株 —
「随分、音沙汰ないけど、どうされているんでしょうか」。久しぶりに検察の扉をノックしてみたくなった。こんな気持ちにさせてくれたのは、衆院の武藤貴也議員(36=滋賀4区)。
この議員、友人や知人に「値上がり必至の未公開株を国会議員枠で特別に買える」と持ちかけて4000万円もかき集めたが、結果「あの株買えなかったわ」。なのに謝るどころか、数百万円は懐に入れたまま。この事実を週刊文春に報じられて自民党は離党したものの、「議員は辞めません」。
とはいえ、この議員、ついひと月前までは政治部の記者でも、「だれ?」といった存在。それが自身のブログで安保法制に反対する若者たちを「自己中心的、極端な利己的考え」と、こき下ろして大ひんしゅく。一部で最近、自民党の若手にはやる売名行為と囁かれたが、首尾よく、いまじゃ文春の巻頭を飾る有名議員。
だけど、この金銭疑惑については「議員枠なんて言っていない」「文春にタレ込んだ男を提訴した」とツッパリ通し。発覚後1週間たってからの弁明記者会見も、離党したはずの自民党担当の平河クラブ記者らに限定、文春などは締め出す極端な利己的会見。
それもそのはず。翌日発売の週刊文春が、じつは武藤議員、今年元日の夜をはじめ約20回にわたって10代の男性を議員宿舎に引っ張り込んで、1回2万円ほどで性行為に及んでいた、と報じたのだ。みっともないなあ。恥ずかしいなあ。
だけど「事実無根」と突っ張るこの議員。こちらの方はこんな恥ずかしいことを暴露されたのに、いまだに名誉棄損の告訴もなし。おかしいなあ。だけど、これでは有権者はたまらない。
一般に国会議員1人につき年間、約2億円かかるといわれている。とすると、あと3年余りの任期、武藤議員にこの先6億円以上払うことになる。その間、国民はじっと我慢というのか。
ここは、やはり検察の出番ではないか。あの大阪地検特捜の証拠改ざん事件から5年。この間、議員摘発ゼロではあまりに寂しい。巨悪を眠らせないのが検察の仕事というが、巨悪とはほど遠い、こんな男でも議員宿舎では眠らせない。バッジをはぎ取る。それも検察の大事な仕事ではないのか。
猛暑が去ったいま、検察の一陣の風に期待したい。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年9月1日掲載)
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