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国会 フラッシュアップ


何も知らないのに高揚する安倍首相
— イスラム国人質事件 検証すると —

 私たちジャーナリズムの中にいる者の仕事として、テレビ出演、講演、もちろん原稿書き。その原稿書きの中にも、ほかの人が書かれた本の書評をするという仕事がある。
日刊スポーツの実際の記事画像
 200から300ページは当たり前。ときには500ページにのぼる本もある。だけど、ひと様が精魂込めて書かれた作品。心して読ませていただく。ちょうど国会で安保法案が強行採決されていたころ、通信社の依頼で「検証 『イスラム国』人質事件」(朝日新聞取材班 岩波書店)の書評を書くことになって、正直、私自身、随分勉強になった。

 その安保法案だ、新国立競技場だ、原発だといっているが、後藤健二さんと湯川遥菜さんがイスラム国に惨殺されて、まだ半年。私たちは事件をしっかり検証したのだろうか。

 がっかりというか、やっぱり、ということがある。中東から急きょ帰国した安倍首相をはじめ政府高官は、官邸に詰め、ヨルダンなどに協力を求めながら、わが国独自の外交ルートで人質解放交渉が進められていると、みんなが思っていた。

 だが取材班によると「宗教指導者や部族長からもまったく相手にされなかった」。それどころか、ある政府高官は「何時まで待機すればいいかを考える材料さえなかった」。まあ、端的にいえば、ただ居ただけなのだ。

 その一方で、えも言われぬ高揚感が政権に漂っていたという。後藤さんたちが人質になっていることを承知で羽田から中東に向かう安倍首相。そのときの様子を記者は「首相の気分は高ぶっていた」と書いている。

 その極め付きはカイロスピーチ。本を読むまで知らなかったのだが、首相のスピーチは、幕末にカイロを訪問した欧州使節団の映像から始まった。はかま姿で刀を差した侍たちがスフィンクスの前で撮った写真をスクリーンに映し出し、登壇した首相は「ISIL(イスラム国)と闘う各国に2億ドルを支援する」と約束。その金額が、イスラム国が要求した身代金2億ドルにそのまま跳ね返ったのだ。

 情報もない、交渉術なんて、てんで知らない。だけど、目指すところはテロと断じて闘う列強国の仲間入り。強行採決の安保法制と、はかまに刀姿の侍たち。書評を書きながら、この国の首相の「真夏の夜の夢」に、うなされる気分だった。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年7月28日掲載)



『検証 「イスラム国」人質事件』(岩波書店)
 http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0610500/top.html
ISILによる日本人拘束事件(Wikipedia)
 https://ja.wikipedia.org/wiki/ISILによる日本人拘束事件
安全保障法制の関連ニュース一覧(Yahoo!ニュース)
 http://news.yahoo.co.jp/theme/0611a1d58559f6bd8417/


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