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新幹線 フラッシュアップ


使命果たすためすべきこと
— 新幹線放火と阪神大震災 —

 1週間前の火曜日、TBS系テレビ「ひるおび!」(月〜金曜午前11時)は、新幹線開業以来の大事件で、テレビの威力、記者やカメラマンの底力を思い知らされることになった。番組途中、「東海道新幹線のぞみ号が小田原付近で火災になっているようです」とディレクターが伝えてきた。
日刊スポーツの実際の記事画像
 間なしに「男が油のようなものをかぶって焼身自殺。ほかに負傷者多数」の速報。それから数分後には、驚くことに発生直後の車内の映像が流れてきた。1メートル先も見えない猛烈な煙、煤だらけの顔で幼児を抱えて逃げてくる女性。TBSの系列局、MBS(大阪)の津村健夫記者とカメラマンが4号車に乗っていたのだ。それから先、番組は刻々入って来る映像と津村記者の携帯電話からの的確なリポートで、ほぼ埋められた。

 その時刻、他のテレビ局はもちろん、現場となった神奈川県警や警視庁でも、この映像にくぎ付けになっていた人も多かったと聞いた。

 それを知って、阪神・淡路大震災のあった年、民間放送連盟賞近畿地区ラジオ報道部門の審査員をつとめたときのことを思い出した。「ラジオ関西」が出してきた作品は、震災発生直後の生放送。神戸市須磨区の局は激しい揺れに襲われる。のんびり流れていたラジオ体操の曲がブチッと切れ、無音声が続く。スタジオの壁は崩れ落ちたが、電波送出システムは奇跡的に生きていた。13分5秒後、音声が復活する。ガーッという雑音が交じるなか、「どうぞ、みなさんに落ち着いて。状況がわかり…し…だ…」。続いて外に飛び出して行った記者がせき込みながら報告。

 私たち審査員は全員一致で、この生放送に最優秀賞を出したのだ。ところが他の局からすさまじいブーイングの嵐が起きた。「たまたま被災地に局があっただけじゃないか」「そんな偶然に賞を出されたら、何カ月もかかって作品を作ったわれわれの苦労はどうなるんだ…」。

 だけど私たちは一歩も引かなかった。自らの仕事に課せられた使命は何なのか。最悪の条件のなか、使命を果たすには何をなすべきか。日ごろからそういう思いを抱いているか─。

 それは報道関係だけではない。あらゆる職業人の上に降りかかっていることではないか。そんなことが思い起こされた1日だった。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年7月7日掲載)



東海道新幹線火災事件(Wikipedia)
 https://ja.wikipedia.org/wiki/東海道新幹線火災事件
「新幹線 火災」の検索結果(Yahoo!ニュース)
 http://news.search.yahoo.co.jp/search?p=新幹線+火災
日本民間放送連盟賞について(日本民間放送連盟)
 http://www.j-ba.or.jp/category/awards/jba101001


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