警察全体で悲惨な事故なくす体制取れないものか
— 猛スピードの犠牲…北海道一家4人死亡事故に思う —
ニュースで伝えるたびに新たな怒りがわいてきて、同時に、やりきれなさと悲しさが募る。北海道砂川市の国道12号で6日夜、一家5人が乗った車にRV車が激突。44歳の夫婦と長女(17)が死亡。さらに別の車にひき逃げされた長男(16)の遺体が見つかった。ひとり生き残った次女(12)は意識不明の重体が続いている。
現場は4市町にまたがる29.2キロの日本一長い直線道路。ひき逃げ容疑などで逮捕された20代の2人の男は仲間5人で居酒屋で酒を飲み、この直線道路で110キロを超える猛スピードでカーチェイス、赤信号を無視して突っ走っていた。飲酒、猛スピード、ひき逃げ、信号無視、車検切れ、無保険…こんな連中は同乗者も含めて全員、最長懲役20年の危険運転致死傷罪やほう助罪で逮捕、起訴してもあきたらない。
憤りと同時に、ひとり残った次女の快癒を願うばかりだが、意識が戻ったとき、仲良しだった家族はもういないことをだれが告げるのか。胸がかきむしられる。
ただ、この事故、新聞もテレビも、もう1点、報道すべきことをしていないのではないか。この日本一の直線道路。ネットでも紹介され、スピード狂の間では知られた存在。このため周辺住民は夜な夜な信号を無視する猛スピードの車や爆音、タイヤのきしむ音に悩まされてきたという。
北海道警も対策を講じてきたと思うが、果たしてどの程度の取り締まりだったのか。直線道路が続く広大な北海道。そんな所で夜間、暴走車を摘発するには、膨大な人手と手間を要する。その一方で事故が起きたら、この大惨事となるのだ。
そんなことを思いつつ先日、大阪で乗ったタクシーが大きな病院の正門に近づくと3、4人の警察官が茂みに隠れている。運転手さんに聞くと、病院が見えると早く診療受け付けをしようと助手席の人がシートベルトを外してしまうことが多い。警察にとってはまことに手際よく摘発件数を稼げるのだという。取り締まりが無駄とは言わない。だが正門まで200〜300メートル。ベルトのせいで事故、まして死亡事故が起きるとは思えない。
言っても詮ないこととは知りつつ、日本警察全体で効率よく悲惨な事故をなくす体制は取れないものか、と思ってしまうのである。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年6月16日掲載)
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