ドローン規制を権益にするな
— 許可喜ぶのは役人だけ —
東京・赤坂のいつものホテルで仕事をしていると、「夕刊用に至急コメントを」と新聞社から電話があった。首相官邸の屋上で小型無人機、ドローンが見つかったというのだ。ホテルから官邸は直接は見えないが、目と鼻の先。上空に舞う報道関係のヘリを目で追いながら、リアルタイムのコメントとなった。
犯人の男は25日、逮捕されたが、なんと4月9日から官邸屋上にデンと居座られていたとはなあ。早速、朝日新聞の素粒子で<外国に「我が軍」送るより追うべきは頭のハエ>と皮肉られていた。
このドローン、昨年私が出演している情報番組でも実際にスタジオで飛ばしてみたが、なるほど災害時の状況把握や離島への物資の輸送などにはまことに便利だ。その一方で当初からテロや盗撮といった悪用が懸念されていたが、残念、それが現実となってしまった。
だけどそうなると、この社会は、ああ、また例によって羹(あつもの)に懲りてなますを吹く。首相官邸や国会、皇居、原発などの上空での飛行禁止は当然として、ドローン購入や操作について、許可制にするという案が与党などで浮上しているという。
ならば、だれが購入者の適性を審査するというのか。それに法令や操縦の試験は課すのか。そうなると、審査する人員だけで膨大な数になる。喜ぶのは権益が広がり、天下り先が増える役人だけではないのか。まして操作できるのは購入時に許可された人だけとなると、災害や緊急時の医薬品の輸送など肝心なときに、ドローンはあるのに飛ばす人がいないという事態だって起きかねない。
ここはまず機材の登録制を実施すべきではないのか。そもそも決められた道路を走るミニバイクに至るまで、車両はナンバーをつけた登録制なのに、空を縦横に飛び回るドローンに機体ナンバーも登録制もないことの方がおかしい。機体にナンバーをつけたうえ、所有者、管理者に法令や飛行規則の順守を義務づけ、違反があったら登録を抹消する。当面はそれで治安も安全も確保できるのではないか。
ドローンに限らず、便利なものはこれから先もどんどんできてくる。便利なものをどうやって便利に使いこなすか。作った側の知恵が問われている。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年4月28日掲載)
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