大人社会のありようも問われるべき
— やはり少年法の年齢は引き下げるべきだが… —
適用年齢を20歳から18歳に引き下げることを中心に、少年法改正の議論が政府与党内で始まっている。選挙権を18歳からにするのにともなって、ならば18歳から大人としての責任を持ってもらおうというわけだ。と同時に、もう1つの背景として川崎市の17、18歳少年による13歳の中学生殺害事件。それに先日、判決が言い渡された三重県朝日町の女子中学生殺害事件があることは確かだ。
なかでも、おととし夏、花火見物帰りの女子中学生(当時15)が18歳の少年に襲われ、草むらで凌辱されたうえで窒息死させられた事件で、強制わいせつ致死と窃盗罪に問われた少年に津地裁の裁判員裁判が言い渡した判決は、少年法にのとって、懲役5年から9年の不定期刑。少女の遺族は、寛刑のうえ検察側求刑の長期10年の不定期懲役を下回る判決に怒りをあらわにし、検察も控訴する構えだ。
私も何度も現地で取材した事件。辱められ、苦痛で意識を失っていた少女が息を吹き返すと口をふさいで窒息死させ、さらにバッグから6000円を抜き取っていた少年は、いま19歳。20歳を超えていれば無期懲役、軽くても懲役20年が想定されるのに、この男は早ければ24、25歳で社会に戻ってくる。
いくら少年法が刑罰ではなく更生を主眼にしているとはいえ、こうした性癖を持つ男が20代で社会に復帰して、再び女性に襲いかかることはないという保証はどこにもない。そのとき一体、だれが責任を取るのか。やはり少年法の年齢は引き下げるべきなのだ。
とは言え、それで少年犯罪が減少するのかというと、そんな甘いものではない。私がかねてから言っているように、17、18歳の少年が集団で深夜徘徊して万引きや恐喝を繰り返す。だが、そんな少年の家族から警察に相談があったことはない。集団を見かけた人が110番したこともない。被害者にむち打つわけではないが、13歳の中学生が午前2時に家にいなくても家族が届け出た形跡はない。こんな大人の社会が、罪を犯した少年は長いこと刑務所に入れておけと大合唱するだけでいいのか。
少年法改正論議は、大人社会のありようも同時に問うものでなければ、意味がないのではないか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年4月7日掲載)
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