組織を浄化 新陳代謝させるものであってほしい
— 春、異動の季節に思うこと —
3月の声が聞こえてくると、テレビ局では4月の番組改編に向けて大詰め。会社や官庁では、人事異動や転勤。気もそぞろな季節だ。そんなときでも、日ごろの地道な努力が見事に一輪の花を咲かせることがある。
20年前、1995年7月、東京・八王子のスーパー「ナンペイ」で女子高生2人ら女性3人が銃で惨殺された事件で、警視庁は女子高生を縛った粘着テープの接着面に付着していた指紋が約10年前、60歳代で病死していた男性のものと酷似していることを突き止めた。男性が直接事件に関わっていなかったとしても、男性の周辺にこのテープを入手できる人物がいたことは間違いない。捜査は大きく進展するはずだ。
警視庁鑑識課が検出不能といわれたテープの接着面から最新の技術で指紋を浮かび上がらせた。そんな地味な努力を続けてきた鑑識課の課長は、この春の異動で事件の本丸、捜査1課長に栄転する。大学を出て、最初の就職先は当時の「ダイエー」。1課の刑事経験は1度もないという異色の人事。新たな風を吹き込んでくれるのではないかと期待されている。
もうひとつ。じつはこの指紋の一件、私が出演している「スーパーJチャンネル」を放送しているテレビ朝日の大特ダネ。日ごろのデカさん宅への地道な夜討ち朝駆け。そんな努力が実を結んだのだ。元大阪府警捜査1課担当記者だった私は、うれしくなって番組で「手前ミソですが、これはテレビ朝日の大スクープ」とコメントさせてもらった。
だが、そんなニュースを伝えるなか、群馬県警渋川署の24歳の交番巡査が地域に住む10歳の女の子を誘拐しようとして逮捕された。かわいいからと目をつけて、管内世帯の巡回連絡簿で家族関係を調べて女児を誘い出していた。
多くの警察官が地をはうように仕事をしているなか、そばにいたら蹴り倒してやりたいような巡査だ。とんでもない男がいた、というだけで片づけてほしくない。上司は何をしていたんだ。なんでこんな男が警察組織にまぎれ込んできたのか。採用試験はどうだったのか。徹底的に精査してほしい。
春、異動の季節は組織を活性化させるとともに、浄化し、新陳代謝させる季節であってほしいと願っている。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2015年2月24日掲載)
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