私たちは身体を張って議論しているか
— 朝日新聞問題 会社仕様の記者たち —
さまざまな災害や、押し詰まってからの総選挙。いろいろあった2014年も残すところ、あと1日。テレビは早々と特番態勢。そんな番組のなかで聞かれるのは、やはり「今年一番、心に残ったニュースは何?」。
もちろん大きなニュースはたくさんあったが、仕事柄、私の心にずっとひっかかっているのは、従軍慰安婦報道などをめぐる朝日新聞問題だ。この一件、下手をすると戦前の言論弾圧と同じ道を歩み始める、その前兆とさえ思っている。22日に第三者検証委員会の報告書の公表。26日には渡辺雅隆新社長の記者会見。そうしたこととは別に、私はこの間、旧知の記者を含めて何人かの朝日新聞記者と本音トークをしてみた。
「やっぱり、みんなが記者ではなくヒラメ社員になって上を向いて歩こうだったんじゃないか」「記者がそろって朝日仕様の眼鏡をかけて、この記事はこう書けば大きく扱ってもらえる。そんな社内風土ができてしまっていたのでは」
あの長文の第三者検証報告書より、こんな言葉がはるかに胸に突き刺さった。思えば私が20年近く在籍した新聞社にも、取材先の人事より社内人事にやたらと詳しい記者がいた。上から言われる前に、この記事はこう書けば上司の覚えめでたいのではないか、あらかじめそんな忖度をしている記者は山ほどいた。
朝日ばかりではない。読売には読売仕様の、産経には産経仕様の眼鏡をかけた記者がゴロゴロいるのではないのか。
もうひとつ、第三者委員会の田原総一朗さんの個別意見も心に残った。「表現は下品だが、編集スタッフが最高幹部と身体を張った議論が出来なかったことこそ、朝日新聞の問題体質である」。
今年、大きな課題として突きつけられた集団的自衛権や、特定秘密保護法の施行。それに原発再稼働。果たして私たちは、本当に議論すべきことを身体を張って議論しているだろうか。さらには近隣諸国をはじめ世界の国々を見る私たちの目は、いつの間にか日本仕様の眼鏡をそろってかけていやしないのか。こうして見てくると朝日の問題体質は、いまの日本の問題体質にも見えてくる。
来年と言わず、いまからそんな問題を謙虚に素直に、1つずつクリアして…。どうぞみなさま良いお年を。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年12月30日掲載)
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