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揺れ動く遺族の思いはある
— 3年前に時効は廃止も… —

 名古屋市西区のアパートの2階の一室。玄関には、色あせた血痕と女性のものと見られる24センチの靴の跡。壁のカレンダーは1999年11月のままだ。部屋の借り主、高羽悟さん(58)は、ここには住んでいない。空室にしたまま15年間、部屋を借り続けているのだ。
日刊スポーツの実際の記事画像
 高羽さんの妻、奈美子さん(当時32)は15年前の11月13日白昼、この部屋で女と見られる犯人に刃物でメッタ切りにされて殺害され、発見時、当時2歳だった長男の航君は、遺体のそばでおもちゃで無心に遊んでいた。

 この事件も、3年前までだったら11月13日の午前0時をもって時効が成立。犯人は逃げおおせることになったのだが、高羽さんたちの運動もあって、殺人事件などの時効は3年前の2011年に廃止され、この日を迎えたとしても捜査は続けられることになった。

 だが、名古屋の東海テレビの取材で、「何か手がかりが残されているかもしれない」と、いまも借り続けている部屋でお会いした高羽さんは「時効が廃止になって、犯人の逃げ得が許されなくなったことには感謝しています。だけど、時効という15年の節目がなくなったことも確か。いつまでこの部屋を借り続けるのか。そんな思いがあるのも事実です」と胸の内を語ってくれた。

 高羽さんの手元には、あのころ「幸せすぎるほど幸せ」と言っていた奈美子さんが航君と遊園地で遊ぶ写真、ご飯を食べさせているビデオなどが残されている。その航君はいま17歳、サッカー好きの高校2年生だ。

 「事件についての思いと言われても、お母さんの顔も知らないし」と、うつむいてしまって取材のカメラマンを困惑させたという。だけど、それを聞いた私は、それも至極当然のことと思えたのだ。彼が記憶にないお母さんを思って涙を流すのは、いつの日か結婚して子どもに恵まれ、その子がお母さんと遊園地で遊び、「お口あーん」と言ってご飯を食べさせてもらう、その姿を見たときではないかと勝手に想像したのだ。

 だからこそ、そのときまでに何としてでも犯人を検挙しておいてほしい。時効は廃止された。だが、そのことに安堵しつつも、乱れ、揺れ動く遺族の思いがあることも、また確かなのだ。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年11月18日掲載)



名古屋市西区主婦殺害事件まとめ(NAVER まとめ)
 http://matome.naver.jp/odai/2140816645081102601
公訴時効(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/公訴時効
【未解決】時効となってしまった殺人事件まとめ(NAVER まとめ)
 http://matome.naver.jp/odai/2133119028924425101


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