ネギもワインもうちわもお呼びでない
— 古くさい政治うんざり —
「必ず腕章をつけて、名刺を忘れずに」。地方支局に赴任したばかりの新聞記者の駆けだし時代、選挙事務所の取材に行くたびに、デスクからくどいほどこう言われた。そうでないと、茶菓の接待に始まって食事の誘い、あげくにお車代。断わるのにひと苦労するところだが、さすがに新聞社の腕章と名刺は、なによりの魔除け。そんな声はかからない。とは言っても、もう半世紀も前の話だ。
唐突にそんな昔の地方の選挙を思い出したのは、先週はニュース番組のほとんどが小渕優子、松島みどりの2人の女性議員の選挙と金に振り回されたからだ。
バスを連ねて演歌歌手の舞台の観劇。ネギにコンニャク、あげくに議員の写真入りワイン。片や盆踊りめぐりに、似顔絵つきのうちわ。結果、安倍内閣の目玉の女性閣僚2人の首が就任1カ月半で吹っ飛んだ。
それにしても、とため息が出てくる。私が腕章巻いて選挙の取材をしていたころからおよそ50年。だけど、ネギだ、うちわだの古臭い選挙が、田舎どころか都会のまん中でもまかり通っているのだ。そんな選挙で国政の場に出てきたこの2人を含めて5人の女性を閣僚に据えた安倍政権。これまた女性を登用しておけば、人気につながるという古臭い発想で、結果はこのザマ。私は番組で、「女性を活用することと、女性を利用することは天と地ほど違う」とコメントさせてもらった。
だけど、その3日後には、小渕さんの後任の経産大臣の政務活動費がSMバーに支出されていたことが明るみに出た。大臣本人は行っていないとのことだが、このバーは下着姿の女性をロープで縛りつけたショーがウリとか。女性活用内閣のブラックジョークにもなりゃしないではないか。
ああ、もううんざりだ。こんな政権が消費税の増税や集団的自衛権容認を押し進めようとしているのだ。この際、女性活用も女性が輝く政治も、もういい。ネギもワインも、うちわもお呼びでない。男も女も関係あるか。
それにしても、私が腕章を巻いて地方の選挙事務所を走りまわってから半世紀。いいかげん、お題目やら人気取りではない、腰の据わった当たり前の政治を実現させられないものなのか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年10月28日掲載)
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