子どもや女性に本と光を
テレビのニュース番組を担当させてもらっていてよかったなあ、と思えるときがある。発表の翌日、ノーベル物理学賞を受賞された名古屋大学教授の天野浩さんと出張先のフランス南部、グルノーブルと中継をつないで、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」でインタビューさせてもらった。
それだけではない。帰国された10日には、東海テレビのニュース番組で名古屋大学におられた天野さんに中継でお話をうかがい、そのあとスタジオには名古屋大学の浜口道成総長にお越しいただくという贅沢な場面に立ち会わせてもらった。
天野さんは飾らないお人柄で、お見合いパーティーで知り合ったという奥様のことにふれるのもOK。テレビ的にはまことにありがたいキャラクターであると同時に、コメントもわかりやすく心を打つ。「これからはどんな研究に力を注ぎたいですか」という問いには、「賞をいただいたLEDで安いお金で光を届けられるようになりました。でもアフリカなどでは、まだまだ電気代が高くて、夜、本を読んで勉強することができない子どもたちが大勢います。その子たちに、もっと安く光を提供してあげたい」。
東海テレビにお越しいただいた浜口名古屋大総長は、3日後にはモンゴルに向かうという。いま名古屋大のアジアの拠点校はモンゴルをはじめ、ミャンマー、ベトナムなど8校。「1歩外に踏み出して志を持つアジアの若者たちのために何ができるか。いま日本の大学、研究者にはそれが問われているのです」。
浜口総長とそんな話をしていたちょうどそのとき、パキスタンのマララさん、史上最年少、17歳の少女にノーベル平和賞が贈られるという速報が流れた。「女性に教育を」と訴えて、イスラム過激派タリバンに銃撃されて瀕死の重傷を負ったマララさん。アジアのひとりの少女は1年前、16歳の誕生日に国連でこう訴えた。
「私は誰も憎んでいない。タリバンの息子や娘たちに教育を受けさせたい。本とペンを手に取ろう。本とペンが世界を変える」
子どもや女性たちに本を。その本を読むために明るい光を。学問とは何か。科学は誰のためにあるのか。そんなことを考えさせられた1週間だった。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年10月14日掲載)
|