ヘルメット着用義務づけていれば…
— 御嶽山噴火 今後の教訓に —
先週は出演しているニュース番組すべてがトップで御嶽山の噴火を伝えた。死者は50人を超え、1991年の雲仙普賢岳の火砕流惨事の43人を抜いて戦後最悪の火山災害となった。
番組で、その死者の9割が噴石が当たった損傷死だったことを伝えながら、私は雲仙普賢岳惨事のときに取材させていただいた、当時の島原地震火山観測所長の太田一也九州大学教授(現・名誉教授)の思い出にふれさせてもらった。
太田さんは、マグマを噴出させる普賢岳を当時、じつに900回も自衛隊ヘリで観測。そんな激務にもかかわらず、地上に降り立つと待ち構えている私たち報道陣の、いわゆる囲み取材に応じてくれて、普賢岳にできた溶岩ドームのきょうの様子や今後の見通しについて懇切にレクチャーしてくれた。
その太田さんが私たちに課した条件がひとつだけあった。取材する記者、カメラマンのだれか1人でもヘルメットをかぶっていなかったら、「その日のレクは即刻、中止する」。
私たち報道関係者がぎりぎりまで山に迫った結果、多くの犠牲者を出してしまった惨事。「身に染みて火山の恐ろしさを知ったはずのキミたちが、そのことを態度で世間に知らしめなくてどうするんだ!」。
雲仙普賢岳噴火から23年。気象庁が常時監視している47の活火山だけでも入山の際、ヘルメットの着用を義務づけていたら、御嶽山の犠牲はある程度は防げたのではないか。結果論というなら、せめてそのことを今後の教訓にできないものか。
それにしても、紅葉の美しい季節に、さあ、お弁当にしようと腰を下ろした山肌が突然、火を噴いてしまうわが国土。そんな国土であることを承知のうえで54基もの原発を作り、それをまた性懲りもなく再稼働させようという愚かしさ。私たちを生かしてくれている国土に対する謙虚さ、自然に対する畏れはないのか。いまこそメディアがその傲慢さ、不遜さを指弾しなくてどうするんだ。
「身に染みて火山の恐ろしさを知ったキミたちが、そのことを知らしめなくてどうするんだ!」。もう四半世紀も前、溶岩ドームを仰ぎつつ聞いた言葉がいままた耳によみがえる。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年10月7日掲載)
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