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取材 フラッシュアップ


永遠のライバルへのエール
— 朝日が受け止めるべきこと —

 福島第1原発事故当時の吉田所長の調書についての記事の全面撤回。一連の従軍慰安婦報道に、池上彰さんのコラムの掲載拒否。ついに社長の謝罪会見。社内体制の改革にまで発展した朝日新聞問題。なぜ、これほどまで醜態を演じてしまったのか。その根っこには、謝罪すると虚報当時の編集幹部の責任まで問われる。「大先輩に恥をかかすのか」という幹部と「逃げるな」とする若手で、朝日は大混乱に陥ってしまったに違いない。だけどこの問題、朝日に限らず、日本中にはびこっていると思いませんか─と書いた前回の続き。
日刊スポーツの実際の記事画像
 私はこれと同じことが起きているのが、冤罪事件と向き合ったときの裁判所だと思っている。たとえば今年、晴れて再審開始となった袴田事件は、発生からじつに48年。この間に、袴田巌さん(78)は無実ではないかという証拠はいくらでも出てきていた。そこは、事例は違うが、今回の朝日問題とそっくりなのだ。

 だが、そこで勇気ある裁判官が袴田さん無罪を主張したらどうなるか。袴田さんを死刑台に追いやった1審、2審、最高裁。それに再審請求をにべもなく蹴った裁判官を含めて、じつに数十人の裁判官に「無実の人を48年も死刑の恐怖にさらした許されざる判事」のレッテルをはることになる。加えて、そこに勲章制度というものがある。陛下がそんな非道な判決にかかわった判事に、そんな虚報に携わったジャーナリストに勲章を授与されていたということになったら申し訳がたたない。私が、かねがね司法とメディアは勲章を最初から辞退しておくべきだと言っている理由はそこにある。無冠の帝王、それこそ最高の勲章ではないのか。

 ともあれ、いま批判と非難のまっただ中にいる朝日。だが、何より重く受け止めるべきは、いったんは掲載を拒否した池上原稿の「朝日の記事が間違っていたからといって『慰安婦』と呼ばれた女性たちがいたことは事実です。これを報道することは大事なことです」という指摘ではないのか。その思いをないがしろにしたときこそ、朝日はすべての読者を裏切ることになる。池上さんの言葉は、記者時代、朝日は永遠のライバルと叩き込まれた私からお送りする朝日へのエールでもある。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年9月17日掲載)



日本中にはびこる問題(大谷昭宏事務所HP)
 http://www.otani-office.com/flashup/n140909.html
冤罪(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/冤罪
慰安婦(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/慰安婦



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