本文へジャンプ サイトマップ 検索 ホームへ移動
ホーム 更新情報 Webコラム スクラップブック 黒田清JCJ新人賞 活動 事務所

フラッシュアップのコーナートップへ
首相官邸 フラッシュアップ


指揮官のいるべき場所
— 土砂災害と首相の夏休み —

 先週半ば、50人を超える死者を出した広島市の土砂災害の際の安倍首相の対応を知って、何人かの方の顔が浮かんできた。振り返ってみると20日朝、山梨県鳴沢村の別荘で夏休みに入っていた首相は午前6時すぎに多数の死者が出ているとの一報を受けたが、電話で指示するにとどめて、7時すぎには予定していたゴルフに向かったという。
日刊スポーツの実際の記事画像
 一緒にコースに出たうちの1人は森喜朗元総理。この人、総理時代、ハワイ沖で死者9人を出した「えひめ丸」の事故の際、ゴルフを続けていたとして批判され、ほどなく辞職したという苦い過去がある。「安倍君、これはまずいぞ」と森さんが言ったかどうかは知らないけど、首相は9時すぎにはプレーを打ち切って官邸に駆けつけ、自衛隊の派遣規模などを指示、午後、別荘に戻ったという。

 これに対して民主党の海江田代表は「深刻な事態に、なぜゴルフを強行したのか」と批判。また元自民の長老、片山日本維新の会政調会長も「トップには慎むべきことがある」。その一方で、同じ維新の橋下大阪市長は「組織がしっかりしていれば問題ない」と首相を擁護。それもそのはず。橋下さんは去年、大阪市に台風で避難勧告が出ていた時間に自宅でツイッターざんまい。その批判に対しては「専門家でもない者が現場にいても、どうなるものでもない」と尻をまくってみせたのだ。

 そんなやり取りを知って、私が事件記者だったころの大阪府警の刑事部長で、後に警視総監になられたOさんを思い出した。Oさんは警視総監として在任していた2年間、一歩も都内から出ることはなかった。

 退任時、事件記者たちがそのことを問うと「警視庁4万2000警察官諸君が総指揮官はどんなときでも同じ管内にいる。そのことを胸に、少しでも士気が上がってくれたら。そんな思いでした」。

 もとより指揮官が事件や災害の現場を走りまわることも、泥にまみれることもあるまい。ならばゴルフもツイッターも許されることなのか。

 こう書きながら、私の胸にはあの日未明、やっと救い出して抱き上げた3歳の男の子ともども、濁流にのまれて殉職された広島市安佐北消防署員。お目にかかったこともない、53歳の消防指令補の無念の思いばかりが浮かんでくるのだった。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年8月26日掲載)




広島土砂災害(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/広島土砂災害
「広島 土砂災害」の検索(Yahoo!ニュース)
 http://news.search.yahoo.co.jp/search?p=広島+土砂災害
土砂災害ポータルひろしま(広島県土木局砂防課)
 http://www.sabo.pref.hiroshima.lg.jp/portal/



戻る このページのトップへ