映像の力とメディアの怠慢
— 号泣県議の辞職に思う —
「やっとやっと議員になれたんですぅ。ヴアァァ、グアッ」。いつも電話出演しているラジオ番組がこの声を流したのだが、時間はわずか5秒。「たったこれだけですか」と聞くと「これ以上流したら、とんでもない音声が紛れ込んできた放送事故と思われるでしょ」とのこと。さもありなんと妙に納得。もちろん声の主は、先週辞任した野々村竜太郎元兵庫県議(47)。
もう説明する必要はあるまい。野々村氏のあの号泣記者会見。私は「辞職ですますなんてとんでもない。県議会は司法に告発すべし。そうでないと、みんながやっているから議会は及び腰だと思われる」とコメントしてきた。結果、辞職と同時に県警に告発。多額の詐欺事件。加えて証拠隠滅の恐れは多い。県警は逮捕せざるを得ないだろう。これをきっかけに、議員の「生活費」と揶揄される「政活費」(政務活動費)に徹底的にメスを入れてほしい。
と言いつつ、メディアの中に身を置く私としては、いささか手前みそになるが、この一件、新聞、テレビ、とりわけテレビが果たした役割は大きいと感じている。地元神戸新聞がスクープした城崎往復や多額の切手購入などのずさんな政活費の使途。そして翌日の号泣会見。これを大阪の朝日放送がいち早く夕方のニュースで放送して火がついた。東京のキー局どころか海外メディアも、これでもかと映像を流して結果、この騒ぎ。
新聞がたとえ1面トップで書いたとしても、所詮、一地方議員の税金猫ばば。辞職、告発までには到底至らなかったはずだ。映像の怖さ、テレビの威力をまざまざと見せつけた一件ではなかったか。逆に言えば、私たちのメディアの怠慢、ゆるゆるの監視の目が、こんな議員をのさばらせることになったのではないか。そういう意味では、あの耳をふさぎたくなる都議会のセクハラ映像もしかり。
来年4月は統一地方選挙。地方の時代、地方分権を言うなら、あらためてメディアがやるべきこと、やらなければならないことは山ほどあるはずだ。もちろん、それをやったからと言って、「テレビがあったからですぅぅ」。ドドドーン(机を叩く音)なんて自慢する気はさらさらないけどね。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年7月15日掲載)
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