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梅雨 フラッシュアップ


衰えない「現場」の士気
— 有希ちゃん殺害犯スクープ —

 「おー大谷ちゃん、6チャンネルでいいコメントしてたじゃないか」。野太い声で電話があった。栃木の下津新聞の観堂義憲社長、というより、私には、いつまでも「カンちゃん」である。小学1年生、吉田有希ちゃん(当時7)殺害犯の勝又拓哉容疑者(32)が事件発生から8年半ぶりに逮捕された翌日のこと。「カンちゃん、お見事、新聞協会賞ものの特ダネだったな」
日刊スポーツの実際の記事画像
 下野新聞は、これより1カ月以上前の4月17日の紙面で、「有希ちゃん事件、30代の男関与認める」の大特ダネを放っていたのだ。その下野の社長、カンちゃんは、もう30年以上前、ともに大阪府警担当の事件記者だったときのライバルという仇敵。彼は毎日、私は読売。それはそれは、すさまじい抜き合い。随分痛い目にも遭わされた。

 そのカンちゃんは、事件記者のあと、海外の特派員や本社の副代表など社の中枢を駆け上って、数年前から下野新聞の社長。その下野が有希ちゃんの無念を晴らすスクープで事件を締めくくったのだ。「カンちゃんが陣頭指揮したんだろう。あんまり栃木を荒らすなよ」「とんでもない、みんな、みんなだよ」。

 カンちゃんは現場の記者が頑張ってくれたと言いたかったに違いない。その声を聞いて、もう1人の男性が目に浮かんできた。栃木県警の茅島和美元捜査1課長。事件から3年がたったころ、地元の記者を通じて当時、事件を指揮していた茅島一課長が、有希ちゃんが連れ去られた現場で私にインタビューしてほしいと言ってこられたのだ。

 なぜ、1課長が、なぜ、私に。そんな思いで現場を歩くと、最後に茅島さんは語気を強めて「現場の刑事の士気はいささかも衰えておりません。必ず事件を解決してみせます。そのことを大谷さんのテレビ番組を通じて、どうしても知ってほしかったのです」。

 それから3年後、茅島さんは、ことあるごとに有希ちゃん事件を口にしながら県警地域部長の現職のまま亡くなられた。

 奪われた幼い命のために、「現場の記者が」「現場の刑事が」と言い続ける指揮官の男たち。その日、私も久しぶりに現場に駆け出して行きたくなった。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年6月10日掲載)




栃木小1女児殺害事件(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/栃木小1女児殺害事件
今市小1女児殺害事件に関連するアーカイブ一覧(Yahoo!ニュース)
 http://news.yahoo.co.jp/list/?t=imaichi_case
下野新聞「SOON」
 http://www.shimotsuke.co.jp/



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